教皇、スペイン議会でスピーチ いのちを守ることは文明の目標
【マドリード(スペイン)6月8日OSV】教皇レオ14世は6月8日、スペインの議会で、全ての人の尊厳を守るよう強く訴えた。尊厳を守ることは党派的な問題ではなく、「文明化した社会の目標」だと強調し、人工妊娠中絶から移住者の問題、良心の自由、ゆるしの秘跡で告白された内容の秘匿義務、一般の生活における教会の役割などについて言及した。
「いのちが基本的な価値として認識されなくなるなら、どのような未来に私たちの社会は向かうのでしょうか?胎児、高齢者、病者、声も上げられずに苦しんでいる人、他者のケアをつねに必要とする人を暗闇へ投げ込む共同体は、完全に公正だと言えるのでしょうか?」と教皇は議員たちに問いかけた。
「人間のいのちを守ることは、党派的な問題ではなく、個人的な信仰上の問題でもありません。人間の文化の目標なのです」と強調。「全ての人のいのちは、いかなる状況にあろうとも受精の瞬間から自然死に至るまで認められ、守られなければなりません」と訴えた。
教皇がスペインの議会で演説するのは史上初めてとなる。深い政治的分断に直面しているスペインにおいて、教皇の演説は多くの注目を引いた。
教皇は、スペインで最も議論されてきた一部の問題にも躊躇(ちゅうちょ)なく踏み込んで話し、7分間にわたるスタンディングオベーションを受けた。
30分に及んだ演説の中で、安楽死から人工知能に至るまでのさまざまな問題に触れ、教皇は「真に公正な社会は全て、人間の尊厳は不可侵だという認識の上に築かれている」ことを強調し、そのような確信が曖昧にされるとき、最も弱い立場に置かれた人々が真っ先に苦しむことになり、法律はその最も深い意味を失うと警告した。
「国の倫理的な偉大さは、何よりも、最も弱い立場にあるいのちに同伴し、守り、愛する懐の深さに現れます」と教皇は語った。
移住者の問題には多国間で協力を
スペインで特に国論を二分する移住者の問題に触れ、教皇は多面的な分析を行った。この問題に一国だけで対応できる国はないとし、移住者の問題を「極めて倫理的で法律的な問題」と呼び、根本的な原因に対処する協力体制が必要になると述べた。
「移住者と難民の状況には、人々を中心に据えた対応が求められており、家を離れることを強いられる根本原因に取り組み、移住者の流れを単に管理する以上のことを行う必要があります」
社会正義を保つ上での二つの提案も行った。移住者たちの実質的な社会統合を実現する安全で合法的な道を提示すること、他方、自国における平和や安全、適切な生活環境の欠如に対処することで、彼らがそこに残る権利を促進するという提案だ。
良心の自由とは善に貢献すること
教皇は議場で、良心の自由を強く擁護し、個々人の確信、良心、信仰が育まれる内面空間を守る義務と呼ぶものを強調した。
教皇は「思考、良心、宗教の自由」を、個人の最も私的な領域を守る基本的な権利と表現した。
「現代の状況の土台をなす自由は、それが本物であるならば、人間の宗教的次元を認め、尊重し、法的に擁護します。他方、信仰が、個々人の社会貢献の務めを放棄する理由にはならないことも明確にするのです」
さらに、「法的領域と倫理的領域を混同せずに、自由の意味を十分理解する必要への留意も大切です。自由であることとは、単に支配から解放されることやたくさんの選択肢を持つことを意味するのではありません。善を認識し、責任を持って善に貢献することを意味します」と教皇は付け加えた。
国の決定は最も弱い立場の人に影響する
一般の生活の中で教会が果たす役割の考察も、スピーチに織り交ぜた。公共の問題について教会が話すとき、行政機関固有の任務と立法機関の合法的権限を尊重しつつ発言すると強調した。そして国会議員たちに、どのような人間観をもって、その法律が立案されたのかを考えるよう促した。
「置かれた立場の真の多様性を超えて、あらゆる法律の制定は、最終的に決定的な問いに直面します。つまり、どのような人間観をもって法律が制定されたのか。それらの法律はどのような社会を築くのか、という問いです」。教皇は、人間の尊厳があらゆる法制度の指針とならなければならないと主張して、議員たちに問いかけた。
教皇は、世界では暴力、対立、相互不信が明らかになっており、「深刻な霊的、文化的危機」にひんしていると警告し、議員たちに対話、歴史的和解、市民間の友情を育むよう求めた。
また教皇は、言葉には現実を照らす一方で、それをゆがめる力もあると述べ、政治家たちに自分の言葉には特に責任を持つよう注意を呼びかけた。
「ですから公職に就く人々には、言葉を武装解除するためにも、自分の言葉には気を配る特別な義務があるのです」「断固とした態度を取るからといって、それは相手を軽蔑することにはなりませんし、反論にも屈辱は伴いません」と教皇は力を込めた。
「国家によるあらゆる決定は、現実の人々、特に発言力の弱い人々に影響を与えるのだということを忘れないでください」

