短歌・俳句 11月
◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ
戦死者の母た己描きたるケーテの眼われを貫く 東京 植竹 雄太
【評】ケーテ・コルビッツはドイツの画家、版画家、彫刻家。第1次世界大戦で息子を亡くし、母としての悲嘆を作品にしています。描かれたケーテの自身の眼にくぎ付けになった作者の衝撃が伝わります。
被爆者の歌友が万感込めて読む「平和の誓い」響き渡れり 長崎 中村 達見
鳩の背に平和が重い八月の天の揺らぎのような羽音よ 東京 稲山 博司
文鳥がこの家に来て囀ればわれはその声聴く者となる 熊本 矢澤 麻子
主を求め拇指一本で聖書めくりパソコンたたく召さるる日まで 枚方 宮永 久人
廃屋のあぢさゐは火を呼ぶごとく枯れ果てにけり酷暑日つづく 熊本 村田 弘子
徒競走人型AI走り抜くころげて発火す天国あるや 横浜 菊地八重子
草を引く間をわが置きし鍵の束カラスが下げて鳴きわたり行く 横浜 森山美智子
遥かなる宣教師の地に地震あれば故郷として祈り重ねむ 京都 杉本 友子
足さすり杳い眼をして母の言う最後に走った時はいつかと 秋田 畑山真理子
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◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎
◎満目の青田の道にそよぐ風 福岡 三谷 淑美
【評】青田の景が、正に日本の原風景である
◎炎天や被爆マリアの黙の声 西宮 井田 國敬
【評】被爆したマリア像の声なき声を聞く作者
秋に入る鐘の音沈む茜空 川崎 守田 光代
蜩や暮れゆく空へ時刻む 大阪 大町 久美
六甲の万緑ロープウェイの窓 大分 水嶋 茂士
指揮の手の聖歌導く堂の秋 豊中 岩田 都世
闇涼し星吊り上げし重機の秀 神戸 西村みどり
夏帽子手話で始まる甲子園 宇治 椎原 園美
月涼し紀伊の山々闇深く 和泉 中里 君子
百歳の歌集読みをり原爆忌 仙台 斎藤 紀歩
秋涼しこの世の未練落としゆく 東京 岩村 惠子
撫子の風と戯れたき花弁 神戸 涌羅 由美
立秋や教師はいつもペン握る 大阪 上本 白水
野分去り騒き戻るや今朝の駅 西宮 井田 君枝
青嵐風の挽歌をかき鳴らす 大牟田 岩永美智子
真夜中に鉛筆削る極暑かな 芦屋 平田ひろみ
秋あかねマリアの肩にとまりけり 三原 村田 和男
こぼれ種大地抱くや牽牛花 秦野 小泉早由美
秋の川命育む水嵩に 選者吟
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