映画『コール&レスポンス』 少年院の内から外から 応答し合う心と心
初めて日本の刑務所にカメラを入れたドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』(2019年)の坂上香織監督の最新作。今回も日本では初めての試みとなる、九州の3カ所の少年院でのラップ・ワークショップを記録した、3時間49分に及ぶドキュメンタリーだ。
「ラップ」とは、1970年代後半に米国で生まれた、言葉(「リリック」と呼ばれる歌詞)をリズムに乗せて、話すように歌う表現方法。少年たちにラップを教えるのは、ラッパー(ラップ歌手)で在日コリアンのFUNIさんだ。
ワークショップは、コロナ禍の2020年12月から始められた。FUNIさんが最初に少年たちに指示するのは、本名とは別の「名前」(MCネーム)を自分自身に付けること。少年たちが自分の思いをリリックに書き、歌ったラップの音源は、市民のラップチームに届けられる。市民らも同じ過程を経て、少年たちのラップに自分たちのラップで思いを返す。タイトルの「コール&レスポンス」は、この応答のことだ。
2回目以降のワークショップでは、少年と市民の少年院内での直接交流が実現。3回目では、少年犯罪の被害者との対話も持たれた。
少年たちが罪を犯すに至った背景は、薬物や暴力が身近にあったこと、複雑な家庭環境などさまざまだ。大人は信用できない、他者の痛みを感じるとはどういうことなのか分からない、と正直に打ち明ける少年もいる。市民の側も、初めは戸惑いや恐れを隠せない。
しかし交流を重ねるごとに、少年たちは、この世界には自分の言葉をしっかりと受け止め、思いを返してくれる大人がいることを知る。言葉と表情は、本人も周りも驚くような変化を見せる。心を揺さぶられ、変化していくのは市民の側も同じだ。
ある少年は、ワークショップ後にこう話した。「本当の自分を取り戻した気がします」
作品は休憩を挟み、前半・後半に分けて上映される。長丁場になるが、ワークショップ参加者の一人になったつもりで見たい作品だ。
12月5日(土)からシアター・イメージフォーラム、ポレポレ東中野(共に東京)、第七藝術劇場(大阪)ほか全国順次公開。作品ウェブサイトはこちら。

