英国議会、安楽死合法化法案を否決 教会「終末期ケアをより受けやすく」
【リバプール(英国)9月14日OSV】イングランドとウェールズのカトリック教会は9月11日、安楽死合法化法案が否決されたことを歓迎した。
この法案は下院での2回目の審議で、賛成270票、反対286票で否決された。
この法案が可決されていたら、終末期の病に苦しみ、余命6カ月未満と診断された成人が、医療従事者の監督の下、死に至る薬を入手することが可能となるところだった。
否決が決まった後、イングランドとウェールズの司教協議会で、いのちに関わる問題を扱う部門の責任司教ジョン・シェリングトン大司教(リバプール教区)は9月11日、声明の中で、この法案に反対を示した全ての人々に感謝を表した。
「この議論を通して、深刻な病気、障害、高齢による不自由さに直面している方々への私たちの対応は、連帯とケアと敬意に根差すべきだと主張してきました」「思いやりのある社会の真の基準は、困難な状況にある人々を支えたいという思いであり、いのちを終わらせるよう背中を押すことではありません」と大司教は続ける。
「いのちが終わりに近づく苦しみへの最も効果的な取り組みは、優れた緩和ケアと終末期ケアをより受けやすくすることだと私たちは確信しています。全ての患者と弱い立場に置かれた方々に、彼らの愛する人々からの支え、そしてあらゆる苦しみを超越する神の愛の支えを受けて、癒やしを見いだしてもらうことなのです」と大司教は強調した。
科学的根拠が示す穏やかな死
議論の中で法案に反対の声を上げた下院議員の一人が、カトリックで労働党に所属するアシュレー・ダルトン氏だ。ダルトン氏はステージ4の完治できない転移性の乳がんを患っている。
ダルトン氏は病の終末期に直面している恐怖と不安をこう語る。「どのくらい生きられるのか分かりません。・・・9週間から12週間ごとに受ける検査を繰り返して生き続けています。前回の検査では病状が安定していたかもしれませんが、次の検査では、腫瘍が大きくなっているかもしれません」
「いずれどこかのタイミングで、使用できる薬がなくなるかもしれませんし、副作用に耐えられないほど弱ってしまうかもしれません。それが何カ月先に起こるかもしれませんし、何年か先のことかもしれません」
「けれども、この法案を巡る議論を経験してみて、終末期の病にある人は、自殺ほう助がなければ恐怖におびえ、痛みの中で死んでいくものだと暗示にかけられているように思えました。それは間違いです。英国の緩和ケアは非常に優れたものだからです」とダルトン氏は強調する。
またダルトン氏は、「あまりにも多くの人々」が、必要な緩和ケアを受けられていないのが現状だと強調し、「『痛みや不快感は緩和できない』という考えは間違っています」と述べる。
「あたかも死の間際には、自分自身の排泄物を嘔吐(おうと)して苦しむ状況が当たり前のように語られ、私もそうでしたが、人々はそのような話に恐怖を感じます。実際はそのようなことはほとんどありません」とダルトン氏は続ける。
「腸閉塞(へいそく)はよく見られる症状ですが、治療可能です。私も1度なったことがあります。死は恐ろしいものだと私のような人々を不安に陥れる発言は無責任極まりないことです。優れた緩和ケアを受けられれば、概して、死は穏やかなものだとする多くの科学的根拠があるからです」と力を込めた。

