映画『声をあげるということ』 ―性犯罪 刑法改正の記録―

目次

映画『声をあげるということ』 ―性犯罪 刑法改正の記録―

 2019年、日本各地で性犯罪の無罪判決が相次いだ。女性が抵抗できない状況にあったことを認めながらも、男性が「同意したと勘違いしていた」「女性の明確な抵抗がなかった」などとする無罪判決。未成年の娘に対する実父からの長年の性虐待についても「抵抗できたはずなのにしなかった」として無罪とされた。
 本作は、そうした状況に疑問を抱き、勇気をもって声を上げた人たちの姿を5年間にわたって追ったドキュメンタリー。
 制作したのは、19年から性犯罪に関する刑法改正に取り組む人たちを取材し、テレビのドキュメンタリー番組を複数制作してきた濱地咲季(はまじ・さき)監督だ。
 19年に始まった「フラワーデモ」。広場に十数人が集まっている。一人が片手に花を、もう片方の手でマイクを持ち、「私は…」と自身の被害の体験を語り出す。時折消え入りそうになるその声に、一輪の花を手に耳を傾ける人、目を閉じて聞く人、目頭を押さえる人、また語る姿を見守るようにたたずむ人もいる。
 自分の声で悲しみや苦しみを語り始めた人たちの輪は、またたく間に47都道府県に広がった。弁護士や国会議員と連携しながら、2023年7月の刑法改正へとつながっていく。
 監督ら製作チームは今回の製作過程で「大切なことを知った」と打ち明けている。その大切なこととは、いかに性虐待をなくそうとする真摯(しんし)な思いがあっても、被害者を傷つけ得るということ。性虐待の根絶を目指す日本の教会も、その苦い体験とメッセージに学ぶことができるのではないだろうか。
 日本の司教団は今年6月の司教総会で、教会に寄せられる相談内容の多様化や、対応を予防的取り組みに転換する必要性を踏まえ、ハラスメントに対応するためのガイドライン作りを行ってきた「未成年者等ガイドライン運用促進委員会」の名称を、「セーフガーディング委員会」に変更することを承認した(→関連記事)。
 「セーフガーディング」とは、子どもや障害者など、社会的に弱い立場にある人々を暴力、虐待、搾取、ハラスメント、事故などのあらゆる危害から守り、安心・安全な環境を整えるための組織的な取り組みや仕組みを指す。
 「フラワーデモ」はその名称から、この運動が女性に限らず誰にでも開かれていることが分かり、セーフガーディングの理念にも通じている。実際、集まるのは、実父からの性加害によるトラウマを抱え続ける女性、職場でのセクハラ被害を経験したシングルマザーのほか、制度の想定から外れてきた性的マイノリティーの人々、被害を受けた男性の姿もある。
 今後教会がこの課題に地道に取り組んでいくためにも、本作品に登場する人たちの、互いに声を聞き合い、一人一人の「小さな改革」を信じて行動する姿は力になるかもしれない。
 上映時間は80分。8月1日新宿K’s cinema(ケイズシネマ/東京)にてロードショー。作品のサイトは、こちら。問い合わせは、パンドラ(kibou@pan-dora.co.jp/電話:03-3555-3987)へ。

© 2026 Tokyo Video Center
  • URLをコピーしました!
目次