教派超え日本の宣教を考える 日本宣教学会全国研究大会
日本宣教学会(金本悟理事長)は6月27日、第20回全国研究大会を関東学院大学・関内キャンパス(横浜市)で開催した。3人の研究者が日本におけるキリスト教会の宣教についての研究成果を発表し、オンラインも含め研究者ら52人が参加した。2005年に発足した同学会は、カトリック、プロテスタント、東方教会などのキリスト教会の宣教や宣教学に関心を持つ人々の研究グループ(会員115人)。
キリストの体の一部となって働く

(中央/左は通訳の立石充子〈あつこ〉さん)
初めに、国際ローザンヌ運動総裁(CEO)のマイケル・オーさんが基調講演を行った。ローザンヌ世界宣教運動は、1974年にスイスのローザンヌで開かれた「第1回ローザンヌ世界宣教会議」から生まれた、プロテスタント・福音派による世界宣教のネットワークだ。
オーさんは講演の初めに、宣教師として2004年、日本に派遣が決まった時の心の葛藤を分かち合った。聖書の「あなたの敵を愛しなさい」(マタイ5・44参照)というみことばに「従えないと思いました」。
オーさんの父親は日本の植民地政策を経験している。「自分には特に敵はいない」と思う一方で、歴史的な観点では「韓国人である私にとって、『敵』は日本人なのだろう」とも感じたのだという。しかし、日韓の歴史があるからこそ、自分はキリスト者の少ない日本にとって必要な宣教師として、神の召し出しを受けたのだという思いを抱き、家族と共に来日。13年から国際ローザンヌ運動のCEO職に就き、16年まで名古屋で宣教師として奉仕。福音宣教のための働き手を育てるキリスト聖書学園の設立にも携わった。
オーさんは日本の教会から「傾聴する」姿勢を学んだと話し、日本の教会が世界の教会と共に、キリストの体の一部となって働くことへの期待を語った。
キリスト教にしか担うことができないことを伝える
続けて3人の研究者らが研究発表を行った。
発達心理学が専門の松島公望助教(こうぼう/東京大学大学院)は、心理学の実証的な研究手法を使って、日本のプロテスタントの教派の一つであるホーリネス系教会の信徒を対象に、宗教性がどのように発達していくのかを研究した結果を紹介した。この研究では、例えば「宗教性の発達と、年齢段階には関連がある」ことが示唆されたのだという。
宗教は個人の内面的なものであるため、データを測定し、分析をする心理学では扱えないと思われてきたが、松島さんは、このような研究が今後、宣教に新たな発見や気付きを与えるのではないか、と話した。
岡本大二郎神父(サレジオ修道会)は、サレジオ修道会の第1回日本宣教師団の団長として1926年に来日したビンチェンツォ・チマッティ神父の書簡6060通を生成AIに学習させ、宣教観を分析した結果を分かち合った。チマッティ神父の書簡は、同会総本部のアーカイブに所蔵されており、テキストデータも公開されている。岡本神父は、これらの作業を基に「もしチマッティ神父が、日本宣教学会に集まった人々に送るとしたら」という前提で生成したあいさつ文も紹介した。
青山学院大学で神学を教え、宗教主任も務めている和寺悠佳(わでら・ゆか)准教授は、日本において、キリスト教がどのように受け入れられていったのかについて話した。
19世紀後半の日本にプロテスタントのキリスト教を伝えたのは主に米国の宣教師だった。和寺准教授は、米国の宣教師らが教会形成において教会員にまず求めたことは「道徳的」であること、「道徳的」に行為できることだったと説明。「道徳」は、「価値観」や「習俗」などと共にキリスト教から派生するものの一つに過ぎないが、当時の人々にとって「信仰を与えられるとは、道徳的につくり変えられることだった」と話した。
そして、キリスト教の信仰が日本でなかなか定着しない理由は、人間の罪をゆるす権威を持つのは神だけ、という認識が希薄であることではないかとも指摘。
日本の宣教の課題は、キリスト教にしか担うことができないもの、提示できないもの、与えられないものを宣べ伝えることができるかどうかではないか、と発表を締めくくった。
次回の同学会全国研究大会は来年6月、東京・千代田区のイエズス会岐部ホールでの開催が予定されている。

和寺悠佳〈わでら・ゆか〉准教授、岡本大二郎神父、松島公望〈こうぼう〉助教)
