ノーベル賞受賞者がローマ宣言に署名 AI主導の核戦争防止の枠組み求める

【ローマ(イタリア)7月17日OSV】ノーベル賞受賞者たちは7月16日、教皇レオ14世の回勅「人間の偉大さ――AIの時代における人格の擁護」を、人工知能(AI)主導の核戦争の防止に向けた「明確な呼びかけ」であり、「大きな前進」だと呼んだ。受賞者たちはローマで、核兵器発射システムにAIの搭載を禁止する世界的な枠組みを求める宣言に署名した。
 署名はカンピドリオの丘のローマ市庁舎で行われ、ローマ南東のカステルガンドルフォにある教皇宮殿での2日にわたる非公開会議を締めくくった。教皇宮殿では、20人以上の受賞者たちが元国家元首や宗教指導者、研究者やグーグル・ディープ・マインド、アール、アンソロピックなどの企業のAI研究者たちと話し合いを行った。
 カナダの天体物理学者で、2015年のノーベル物理学賞を受賞したアーサー・ブルース・マクドナルド氏は、多くの科学者は教皇レオ14世の回勅を「人類のための文書」として歓迎している、と会議後の記者会見で語った。
 マクドナルド氏は、教皇は、核兵器の脅威が継続する中で、AIがもたらす危険性を世界に警告できる独自の立場にあると言う。
 「私たちはまさに今、実際に・・・人類の危機に直面しています」と述べ、回勅を「とても時宜を得たもの」と評価した。
 フィリピンのジャーナリストで2021年のノーベル平和賞を受賞したマリア・レッサ氏は、教皇のこの問題に対するリーダーシップと、AIがもたらす倫理的課題に声を上げた勇気を称賛した。
 米国の循環器専門医で、1985年にノーベル平和賞を受賞した団体、核戦争防止国際医師会議の共同創立者のジェイムス・E・ミュラー氏は、教皇が回勅の第5章で展開した核抑止と新たな軍拡競争への批判は、「大きな前進」だと述べた。

 重大な判断を自律型兵器に任せない

 「AIと核兵器の時代に、非武装・軍縮による平和のローマ宣言」と題されたこの宣言は、AIの管理、核軍縮、新たな技術によってもたらされる危機を取り扱った六つの原則が提示されている。また、核兵器を発射するか最終判断が許される自律型兵器は存在してはならず、「意味のある人間の制御」が、自律型兵器の判断よりも優先されることを確実にする国際条約・枠組みを作ることを求めている。
 またこの宣言は、AI開発事業者に、自社のAIモデルの振る舞いを決定している原理を公にし、またその説明責任を持つよう促し、いかなる企業も政府も、人間が監視や停止することができない完全に自律した、自律進化型のAIシステムを追い求めてはならないと言及する。そして核保有国に、AIによる不正な干渉から自らの兵器システムを保護するための検証を行うよう求め、同時に、既存の核不拡散条約の下で、核兵器の検証可能な廃絶に向けた交渉を改めて行うよう求めている。

 会議は教皇の回勅を体現

 そしてこの宣言は、核の時代とAIの時代が重なる中で、人類は「決定的な時に」直面しているという記述で始まる。人類は、核兵器が開発された後、核の恐怖が永遠に続くことを防げなかったと指摘し、AIを利用することによって、同じ過ちを繰り返さないよう警告している。
ノーベル賞を受賞したアルベルト・アインシュタインとバートランド・ラッセルが1955年に、核兵器の危険性を強調したラッセル・アインシュタイン宣言にある言葉を引用し、今回の宣言は「私たちは、人類として、人類に向かって訴える――あなたがたの人間性を心にとどめ、そしてその他のことを忘れよ、 と」と述べ、「私たちの生存と将来の世代の生存が危機に瀕(ひん)しているのです」と付け加える。
 2004年にノーベル物理学賞受賞したデイビッド・グロス氏は、政府の指導者ではなく、国民からの圧力が、究極的に変化を推し進めると強調した。
 「若者たちが現在ある危機を知らされるなら、・・・彼らは再び町に出てデモをするでしょう」と、グロスはこの宣言への署名後に語った。
 3日間にわたったこの会議は、「AIと核戦争に関する世界のノーベル賞受賞者たちの集い」と呼ばれ、およそ200人の代表者が集まり、シカゴ大学存在的リスク研究所やハーバード大学医学大学院、米国カトリック大学などが共催した。
 ブラックホールを研究するシカゴ大学の天体物理学者ダニエル・ホルツ教授は、ローマでのこの会議自体が、教皇レオ14世のメッセージを体現していたと語った。
 「この会議は・・・回勅の生きた実例です」「回勅が示している通りの取り組みを行っているのですから」と述べた。

ノーベル賞受賞者たちは7月16日、カンピドリオの丘のローマ市庁舎で、「AIと核兵器の時代に非武装・軍縮による平和のローマ宣言」に調印した (OSV News photo/Courtney Mares)
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