聖地でキリスト教信者への暴力広がる イスラエルがレバノン南部を攻撃

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聖地でキリスト教信者への暴力広がる イスラエルがレバノン南部を攻撃

【エルサレム5月4日OSV】イスラエルのブルドーザーがレバノン南部のヤロウン村にあるキリスト教系の学校を破壊していると5月2日に報道された後、イスラエル国防軍は、いくらかの損傷はあったとしながらも、学校をブルドーザーで「破壊」はしていないと発表した。
 聖座(バチカン)が発行する新聞オッセルバトーレ・ロマーノとレバノンの国営通信NNAは、レバノン南部の都市ビントジュベイル近郊のヤロウン村にある同校の破壊を報じた。
 オッセルバトーレ・ロマーノによると、同校には修道院もあり、「修道女たちは何百人もの生徒の霊的、文化的成長を育んできた」。ヤロウン村は「2024年のイスラエルとイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとの戦闘で、イスラエル軍が村の一部を焼き払って以来、住民は家と土地を追われて人気はなくなり、廃墟と化していた」という。
 聖地管理特別管区の教皇代理を務めるイブラヒム・ファルタス神父は、バチカン・ニュースの社説に、ヤロウン村で破壊された学校と修道院は「爆撃を免れ唯一残っていた建物で、その破壊は何百人という子どもや青年たちの霊的、教育的なよりどころを消し去ったことを意味します」と書いた。
 「神聖な場が破壊され、非道な行為を受け、人間が傷つけられ、辱めを受け、宗教的しるしや象徴が踏みにじられることが、いったい誰の名のもとで、どのような動機で、可能となるのでしょうか?」と神父は問いかけた。
 「人間に対して、これほどまでの憎悪を生み出すものは何なのでしょうか?信仰や人生が異なっていても同じ人間なのです。」
 イスラエル側は、ヒズボラが民家や教会を利用してイスラエルに攻撃を仕掛けたため、ヒズボラのインフラに攻撃したとするが、レバノン南部のさまざまな村に同様の理由で攻撃を重ねていると同紙は報じる。
 「村人たちは強制退去させられ、その後イスラエルは爆撃する。そうしたうえで、ブルドーザーが入り、家から何から全てを取り除いて更地にしていく。全ての歴史の記憶は消し去られ、人気のない、どこなのかも分からない、過去をなくした景色だけが残っている」
 ファルタス神父は「キリスト教の信仰を宣言する人々に、このような暴力的行為で応えることには納得できません。聖地のキリスト教信者は挑発に反応せず、受け入れ、ゆるし、隣人を愛しているからです。そしてキリストに属する者であることを誇りに思い、キリストの地上での働きと、キリストが御父の愛と聖霊の力を明らかにされた声を聞いたこの聖地で生まれたことを誇りに思っています」とバチカン・ニュースにつづった。

 エルサレムでは修道女に暴行

 キリスト教信者への暴力は、エルサレムとヨルダン川西岸地区からも聞かれる。
 エルサレムではフランス人の修道女が4月28日に、敬虔なユダヤ教徒の男性に地面にたたき付けられ、頭を石にぶつけた。男性は一時立ち去ったが、戻ってきて地面に横たわる修道女を蹴った。男性は逮捕されたが、「エルサレムでは、礼拝所、宗教指導者、キリスト教信者に対する暴力、侮辱、怒りといったさらに耐え難い状況が起きています」とファルタス神父はバチカン・ニュースに記した。
 「これらの攻撃はどのような場合にも正当化できませんし、三つの一神教の聖地(訳者註:ユダヤ教、キリスト教、イスラム教はいずれもエルサレムを聖地としている)で起こることなど、絶対に受け入れられません」 
 「私たちが、自分のいのちと他者のいのちを尊重するなら、平和な共存は可能です。他者の生活をよりよく理解できれば、平和は可能です。また接点をもちながらも、互いによくは知らないという人同士の間で、しっかりとした関係性を築けるなら、平和は可能となるのです」と神父は書く。

 西岸地区、入植者による不法侵入も

 ヨルダン川西岸地区では、入植者による攻撃はより暴力的となり、ラテン典礼エルサレム総大司教座は、「地元住民と総大司教座が保有する数カ所の場所に対する攻撃」を繰り返し非難している。総大司教座の代表者は4月下旬に、軍当局や民政の代表者たちと会い、「最近の入植者たちが、総大司教座が所有する土地にまで不法侵入している事態の深刻な影響について協議した」という。
 総大司教座は4月23日の声明で「総大司教座の寄贈担当部は、教会に寄贈された土地などを守ることについては、越えてはならない一線だと認識しています。私たちの神聖な場所を守り、教会のアイデンティティーを保持し、法的権利を擁護し、地元の人々の支援を続けるためには、必要なあらゆる法的・行政的手段を講じ続けます」とした。
 ファルタス神父は続ける。「初期のキリスト教共同体は迫害に苦しみました。最初の殉教者たちは、いのちをささげてキリストを証ししました。現代は、時代は異なりますが、困難で複雑な時代を乗り越えようという意識を強く持っています」
 「私たちの主の受難と死という消すことができないしるしである十字架から、復活を通していのちの希望が花開きました。神のいつくしみに信頼する人々が、心をこめて自分にしるす十字架のしるしこそが、私たちの力となるのです」と神父は述べた。

レバノンとイスラエルの停戦が発効して10日となる4月18日、レバノン南部のナバティエにあるアパートの破壊された窓から外を見る、イスラエルの空爆を免れ両親と共にベイルートへ逃れたアラ・ダヌンさん(12)(OSV News photo/Zohra Bensemra, Reuters)
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