米司教、ハイチへの強制送還見直しを訴え 現地はギャングが横行、殺害や誘拐多発

目次

米司教、ハイチへの強制送還見直しを訴え 現地はギャングが横行、殺害や誘拐多発

【マイアミ8月26日OSV】ハイチの首都、ポルトープランス近郊で8月23日、ギャングによる残虐な襲撃があり、数十人が殺害され、誘拐も発生している。この状況を受け、米国は数十万人のハイチ出身の移住者に対する強制送還からの保護措置の「撤廃」を「見直す」べきだ、とマイアミ教区のトーマス・G・ウェンスキー大司教はOSVニュースの取材に答えた。
 この虐殺は、ケンスコフ村で発生し47人以上が死亡し、少なくとも50人が誘拐された。
 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この襲撃を非難し、8月25日に自身の報道官を通じた声明で、22人の犠牲者は「現地からの情報によると、避難していた教会の敷地内で殺害された」と述べた。
 「この事件は、ハイチが安全ではないことを示し、いまだに燃えさかっている家のような状態だということを示しています」と大司教は憤る。
 「この襲撃を契機として米国政府は、失効させた『一時保護資格』(TPS)を受けていた米国にいる30万人以上のハイチの人々を母国へ強制送還する決定を考え直すべきです」
 1990年の移民法の一環として、議会によって制定された強制送還からの一時保護措置は、戦争や自然災害などの危機に直面していると米国土安全保障省が指定した国々から来た人々を強制送還から保護するもの。2025年時点で、33万人以上のハイチの人々がTPSの保護資格を得ていた。
 地方裁判所判事は8月5日、トランプ政権がハイチへのTPSを廃止することができるという、今年6月の最高裁判決を決定付けた。
 ウェンスキー大司教は、先日上院で審議された法案が可決されるなら、ハイチへのTPSは2029年初めまで延長されるだろうと指摘する。
 ドナルド・トランプ米大統領が「イエスと言えば」、この法案は「すぐにでも議会を通過するでしょう」と大司教は言う。

 惨めな思いをさせ、現地へ追い返す

 大司教は、今回の襲撃は「ハイチの中でも治安の良い地域」で発生したと述べ、このことは「ギャングたちが明らかにその一帯を支配しており、住民たちを恐怖に陥れている」ことを示している、と指摘した。
 同時に米国は、自国民に、犯罪、誘拐、テロ、医療の不足を理由にハイチへの渡航を控えるよう呼びかけているにもかかわらず、ハイチの人々を「ギャングの暴力にさらされる」であろう母国へ送還している、と大司教は非難する。
 「ハイチは悲劇の中にあります。それなのに彼らを強制送還することで、悲劇をより一層ひどいものとしているのです」
 「今起きていることは、多くの人が就労許可を失い、大半は運転免許証も失っています。ですから、働くことができなくなり、家賃を払えず、食料も買えません」
 ハイチにいる家族を支援するために、米国に来た移住者が稼ぎ、母国に送る資金に頼っている母国の親族たちもまた、現地で子どもたちの教育のために必要となる重要な資金源を奪われることになるという。
 「これらの子どもたちは学校に通えなくなります。そうなるとハイチの状況も、さらに複雑さを増すでしょう」とウェンスキー大司教は語る。
 マイアミ教区では「TPSを受けていた45人ほどを帰らせねばなりませんでした。というのも、彼らの就労許可が取り消されたため、私たちは合法的に雇うことができなくなったからです」と続けた。
 「つまりハイチの人々に惨めな思いをさせ、ハイチへ戻そうとしているのです」「けれども今ハイチに戻ったとしても、混乱とさらなる痛み、さらなる苦しみ以外何もありません」と大司教は強調する。

 悪い時でも、教会は使命を果たす

 8月23日の襲撃後、ウェンスキー大司教は、ハイチの司教協議会会長でポルトープランス教区のマックス・ロワ・メシドール大司教と話をした、と語った。
 国連によると、ポルトープランスの約90%が26のギャング団に支配されているという。「まるで未開拓地のような状態です」とウェンスキー大司教。
 メシドール大司教は、「ギャングの大半が」ポルトープランス教区にいると証言した、とウェンスキー大司教は述べ、「良い時でも悪いときでも、教会はその使命を果たし続けなければなりません」と語った。
「今はまさに、ハイチにとってとても悪い時なのです」

8月24日、ハイチの首都ポルトープランス郊外のケンスコフ村で、武装ギャングによる夜の急襲で殺害された人の遺体が覆われている横で嘆き悲しむ男性。力を持つギャングが連携して8月23日の夜、かつてはのどかな農村部を襲撃し、少なくとも47人が殺害され、50人が誘拐された (OSV News photo/Patrice Noel, Reuters)
  • URLをコピーしました!
目次