パレスチナ・ガザで学校再開 「通常」へ向かう重要な一歩
【エルサレム9月1日OSV】世界中の子どもたちが秋を迎え新学期が始まるが、パレスチナ・ガザの子どもたちは、それとは全く違う現実に戻ろうとしている。ガザにある聖家族小教区が、イスラエル軍の攻撃が始まって以来初めて、閉鎖していた学校を再開するからだ。
エルサレムとパレスチナの総大司教代理のウィリアム・ショマリ補佐司教は、この小教区の敷地で授業を再開することは、現在も続く戦闘と破壊のただ中で暮らす数十人の子どもたちにとって、通常の生活へ向かう小さいけれども、重要な一歩となる、と語る。
「学校の再開自体が、癒やしの一つです」と司教は8月28日、OSVニュースの取材に答えた。「ガザの状況は今も通常とかけ離れています。戦闘が続き、終結したとは言えない状況です。けれども、そのような現実の中でも、子どもたちが慣れ親しんだ日常を送る安全な場所があり、信頼できる教師がいることで、一日のうちの数時間だけでも子どもたちにとって『頼れるもの』を与えられることになります」
この9月の新学期に、ガザにある唯一のカトリックの小教区は、約1000人の生徒を受け入れる。180人が総大司教座の幼稚園に、820人が小学校に通うことになる。
司教が強調する学校再開の重要性は、ラテン典礼エルサレム総大司教のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿が8月26日、新学期に向けて書き送った書簡の内容と一致する。
書簡の中で枢機卿は「聖地のいくつかの場所では、学校に通うことはもはや当然のことではなくなりました」と記す。
「教室がなくなった子どもたちもいますし、新学年の喜びを感じるどころか、避難生活を強いられ、死や破壊の恐怖におびえている共同体もあるのです。」「私たちのキリスト教の学校は、単なる教育機関以上のものです。というのも、聖地にキリスト教が存在し続けるための重要な要素であり、異なる信仰を持つ生徒や家族を受け入れ、『共存』と『互いの尊重』と『他者の受け入れ』を何世代にもわたり教えるからです」
二つの「切り離せない」責任
国連人道問題調整事務所が8月24日に発表した報告書によると、2万1283人の子どもを含む7万3000人以上がガザで死亡している。そして約198万人――人口の約94%――が家を失い、約63万7475人の学齢期の子どもたちが正式な教育を継続して受けられていないという。
2023年10月に戦争が始まって以来、この聖家族教会は、家を失った家族にとって必要不可欠な場となってきた。2025年には教会の敷地もイスラエルの攻撃を受け3人が死亡し、建物も損傷した。(関連記事https://cj-news.org/world/2438/)
そのような困難にもかかわらず、小教区の主任司祭ガブリエル・ロマネッリ神父とその職員は、校舎の修復を徐々に行ってきた。
そのかいもあり、「教えるための場が使えるようになりました。その一方で、戻る家のない家族にも場所を提供できています」と司教は語る。
教育することと、弱い立場に置かれた家族の避難所となることは、総大司教座の二つの「切り離せない」責任だとも述べた。
希望は「恐れ」よりも強い
その他、安全確保も大きな懸念点だという。安全対策について問われ、司教は、現地の不安定な現状を考慮しつつ、可能な限り生徒たちの通学を見守り、明確な緊急処置を含む予防策を準備している、と語る。
「現状、ガザで安全を絶対的に保障できる施設はありません」「全てのパレスチナの人々と同様に、神のみ旨に信頼を置き続けています。その一方で、私たちに託された人々を守るために、人間としてでき得る限りのことを行っています」
総大司教座は学業と共に、深刻なトラウマ(心的外傷)に苦しむ生徒や教師に心理的支援を行い、教師たちには物的・倫理的支援も行っている。
「教師たちは自身が直面している困難にもかかわらず、生徒たちのことを思い、教え続けようとしてくれていて、その姿勢に深く感謝しています」「教師たちの頑張りこそが、教育の重要性を力強く証ししています」と司教は感謝を述べた。
困難や課題が山積しているにもかかわらず、ショマリ司教にとって、ガザでの学校の再開は「希望と回復と連帯を示す力強いメッセージ」となっていると語る。
「この学校を通して、教会は、地元のキリスト者の家族に、あなたたちは忘れ去られておらず、ここ最近の歴史の中で間違いなく最も苦しい時期にあっても、あなたたちは見捨てられることはない、と伝えています」と司教はOSVニュースに語る。
「教育とは、社会的なサービス以上のものです。それは将来を信じる行為であり、キリスト教発祥の地におけるキリスト者の存在感を強める具体的な取り組みでもあるからです」「この学校に通う全ての子どもたちは、希望は『恐れ』よりも強いこと、また教会は今も変わらず『尊厳と機会と平和という未来』を築くために全力を尽くしていることを思い起こさせてくれる存在です」

