南山大学 第5回「人間の尊厳賞」 シナピスのビスカルド篤子さんが受賞

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南山大学 第5回「人間の尊厳賞」 シナピスのビスカルド篤子さんが受賞

 南山大学(設立母体・神言修道会/名古屋市)の建学の理念「人間の尊厳のために」を実現するために、多大な貢献を果たしている人物や組織等を表彰する「人間の尊厳賞」。大学創立75周年を記念し、2021年に開設された同賞の第5回受賞者に、松浦ビスカルド篤子さんが選ばれた。ビスカルドさんは大阪高松教区社会活動センター「シナピス」副センター長で、日本で暮らす外国人や難民支援に30年以上携わってきた。同大学フラッテンホールで5月23日、表彰式と記念講演会が行われた。

キサラ・ロバート南山大学学長(左)と松浦ビスカルド篤子さん(主催者提供)
 体を張って助けた司祭

 表彰式では、南山大学からビスカルドさんに表彰盾と、副賞として50万円が贈呈された。
 続けてビスカルドさんが「難民との出会いによって示された人間の尊厳」と題して講演した。講演の冒頭、ビスカルドさんは同大学に入学し、建学の理念「人間の尊厳のために」に触れて以来、その意味をずっと考えてきたと話した。卒業後も、折に触れてこの言葉が頭をよぎり、心に響いたという。
 「『人間の尊厳』が大事にされていない場面に出会ったり、あるいはそういう(尊厳が大事にされていない)人に出会ったりした時に、怒りや悲しみや、『なぜだ』という気持ちが湧いて出て、そのたびに考えさせられました」
 ビスカルドさんが大阪(現・大阪高松)教区で外国人支援の活動に携わるようになった1991年当時、大阪市中央区にあったカトリックの神学校には、だまされて労働力を搾取されていた多くのフィリピン人やタイ人の女性たちが、司祭たちに救出され、かくまわれていた。司祭たちは、ある時は女性たちが勤務するスナックの客のふりをして店に入り、女性たちが逃げる算段を考えたり、またある時は母国に無事に帰ることができるよう出入国在留管理局(入管)に同行したりしていた。
 ある司祭が入管に同行した時のこと、暴力団員の追跡を受けて、入管で鉢合わせしてしまう。司祭は体を張って阻止するものの、相手は(女性の)借金を返せと迫った。するとその司祭は銀行に走り、自分の貯金の中から、なけなしの30万円を暴力団員に渡し、女性を助けたのだという。
 「(そのことに)びっくりしたんです」
 体を張って女性たちの尊厳や命を守る司祭たちの姿に心を動かされた人々と共に、協力する体制が徐々にでき、弱い立場に置かれた人々のためのシェルター活動が展開していった。
 現在の大阪高松教区社会活動センター「シナピス」が発足したのは2002年のこと。「谷間に置かれた人々の心を生きる」小さな組織であるシナピスは、「素人」のボランティアによって運営されている。在留資格や就労ビザがなく、日本の法制度の外に置かれている外国人からの相談が多いという。

講演するビスカルドさん(主催者提供)
 難民支援はスケールが違う

 ビスカルドさんは「難民支援は、その国の戦争と平和に関与しなければならなくなるので(通常の外国人支援とは)スケールが違う」と指摘する。
 シナピスの最初の難民支援は1999年、アフガニスタン難民だった。難民の多くは、タリバンに家族を殺されていた。難民認定申請のためには、客観的で正確な情報収集が大事だが、過酷な状況を生き延びようとする過程で、迫害の記憶をなくしてしまっている人も多いのだという。
 またスタッフには「トラウマや精神障害を抱えている人に向き合うタフ(強)さが必要です。支援者に暴言をぶつけてくることもあります。シナピスは善意のボランティア団体に過ぎないので、キャパ(許容範囲)を超えてしまうこともあります。職員のケアも必要なのです」。
 2021年8月、米軍がアフガニスタンから完全に撤退した際も、ビスカルドさんは日本に住む知り合いのアフガニスタン人から、現地でタリバンにおびえている家族を助けてほしいという連絡を受けた。何百万人もの人を助けることはできないかもしれないが、まずは「一人から助けていこう」と、ビスカルドさんらは粘り強く、外務省や法務省に働きかけをした。
 あの「司祭の30万円」のように、シナピスが身元保証や生活の支援をすることを提案し、その家族を退避できるよう交渉を重ねた。そして世界がコロナ禍にあった22年2月、「命のビザ」が出た。
「(その家族が)羽田に着いたときは涙が出るほどうれしかったです。諦めないでやる、ということが本当にキーワードだなと思いました」
 この時、アフガニスタン人家族を支援したことの実りの一つとして、23年には当事者支援団体であるJASA(日本アフガニスタン支援の会)が設立されている。
 シナピスでは、難民と共に能登での被災地ボランティアも行っている。「『シナピス難民チーム』と呼ばれて、『日本の青年の1.5倍は働く』と評価をいただいています。こういうふうに一緒に生きていく、そしていつか必ず、日本で安住の地が得られるように、人間の尊厳が認められるように向き合っていきたいと思います」

シナピス難民チームの能登被災地ボランティア(2025年7月/主催者提供)


 ビスカルドさんは、講演をこう結んだ。
 「人間の尊厳は何かと思うとき、それは私が大事にされているように、私が愛されているように、その人(相手)も私と同じように人間らしさがちゃんと認められるはずだと思います。それには実践の訓練や努力がいるのかもしれませんが、やりがいのある努力だなと思います」 

 誹謗(ひぼう)中傷ではなく事実を知る

 質疑応答では、「仕事や学校があっても、両立できる身近な難民支援にはどのようなものがあるか」という中学生からの質問に、ビスカルドさんは「SNS(交流サイト)やインターネット上の難民に対する誹謗中傷を見たら、『いいね』しないこと」だと答えた。そして周りの人から、難民申請者には「テロリストがいるらしい」「就労目的で来ているらしい」などと言われたら、自分で事実を確認すること、周りに流されずに立ち止まる訓練をしてほしいと話した。
 「日本政府に求めることは」という別の質問者には、まずは難民認定申請者には取り急ぎの生活保障をすることだと回答。また多くの難民認定申請者は、密航やブローカーを通じた偽装状態で日本に入国してくるため、違法な入国かどうかの調査が先になり、難民に該当するかどうかの調査が後になる。ビスカルドさんは、日本も「難民の地位に関する条約」に加入している多くの先進諸国のように、保護を求めて日本の空港や港に入ってきた外国人が、難民の要件に該当するかどうかの調査を先にしてほしいと訴えた。

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