教皇の仏訪問、エリゼ宮殿でスピーチ 全てのいのちを守ることは私たちの責任
【パリ9月25日OSV】教皇レオ14世が乗るチャーター機は9月25日、午前10時少し前にフランスのオルリー空港に着陸した。タラップを下り、フランスのマクロン大統領に迎えられた教皇は、4日間にわたる過密なフランス訪問の初日をスタートさせた。最初の訪問先は大統領官邸であるエリゼ宮殿。まずはマクロン大統領と私的会談を持ち、その後、同国の政府関係者と外交団に向けてスピーチを行った。
教皇は、フランスの政府関係者たちに、全ての人のいのちを守るという義務を決して忘れてはならないと力強く語り、「死への援助」、中絶、代理出産を厳しく非難した。
「生きる権利の保護は、その他全ての人権とは切り離すことができない基礎となるものです」
また教皇は「科学と技術を、遺伝子操作や代理出産、臓器の売買、さらには自分の死を調整する可能性などを奨励する利益主導の新興事業へと変えてしまうリスクをはらむ社会の傾向」について懸念を示した。
議員たちに心と考え方の回心を求めつつ、教皇は「無条件にいのちを受け入れる必要性、弱い立場に置かれた人を愛情あるケアで支える必要性、敬意と相互信頼のうちに人生のあらゆる段階であっても寄り添う必要性、勇気と思いやりを持って、意見を表明できずにいる人や無視され、顧みられないと感じている人を守る必要性」を、教皇は強調した。
「互いに尊重し合い、全ての人のいのちを守ることは、私たち一人一人が果たすべき責任です」と述べ、「世界人権宣言」が最初にパリで宣言されたことを思い起こさせた。
人はかけがえのない価値を持つ
今回のフランス訪問のテーマは「世を生かすため」(ヨハネ6・51)。このテーマは同国の信者たちに響くだろう。というのもこの7月に特定の条件を満たせば、安楽死と自殺ほう助が可能になる「死への援助法」が合法化されたばかりだからだ。この動きを同国司教団は「過激な選択」と呼び非難している。
教皇は続ける。「昨今では科学に、あらゆる形の苦しみを取り除いたり、緩和したりすることを期待する誘惑があります。しかし、それはしばしば自己妄想に向かわせるリスクをもたらします」
「なぜなら、科学と技術がより賢明な知恵に導かれない場合、それらは一見、人々の望みや痛みに明らかに応える解決策を即座に提供するように思えますが、人々が熱望する、より素晴らしい善から人々を深刻なまでに引き離してしまうこともあるからです」
そして教皇は、17世紀のパリで聖ビンセンシオ・ア・パウロが行った慈善のわざの証しと、現代でもその素晴らしい遺産を引き継ぐ多くのカトリック施設について言及した。
「それぞれの人間性と福音の価値に忠実でい続けた男女の並外れた努力を通して、フランスのカトリック教会は、貧しい人や恵まれない人の幸福のために継続して心を配り、神ご自身のいつくしみと思いやりを映し出す生きた顔になろうとしてきました」
「今日では、それらの多くのカトリック施設で、介護士の方々が、苦しみの中にある私たちの兄弟姉妹たちに寄り添っています。ケアと気遣いというこれらの模範は、人類の中で真の教訓となってくれます。それらは、人を思いやることの気高さを表し、全ての人は唯一無二でかけがえのない価値を持っていると、強烈に思い起こさせてくれます」
心の中にある渇きが信仰へ導く
フランスは伝統的にカトリックが主流の国である一方で、現在政府は、国家と宗教を分離する「ライシテ」と呼ぶ公共の場での厳格な宗教的中立主義を貫いている。
過去行った統計ではばらつきはあるが、平均して現代のフランス国民の半数以上が、「何の宗教にも属していない」と答えている。この世俗主義を踏まえ、フランスの司教協議会の報道官を務めるピエール・アントワン・ボゾ司教は、フランスの「現代の人の心の中に真の渇きがあります」と語り、今年、同国で10代から成人にかけての洗礼志願者数が記録的に増加したことが、「フランスで霊的好奇心が目覚め始めた」証拠だと指摘した。
教皇はエリゼ宮殿でのスピーチの終わりに「戦争のニュースやさまざまな危機に世界が見舞われている現状に直面する中、フランスは愛する欧州の中でもひときわ、平和と多国間外交を根気強く推進する国であり続けるよう求められています」と力づけた。
「フランスの皆さんの自由が、共通善を常に求める中で育まれますように。皆さんのきょうだい愛が人類家族全体を包みますように。そして皆さんが常に求める『平等』が、正義と愛という基礎の上に築かれますように。つまり人々の間の違いを消し去ることによってではなく、社会全体のために、その違いを調和しながら花開かせることができますように」

