教皇、ユネスコ本部でスピーチ 技術を人間の尊厳に奉仕させる
【パリ9月25日OSV】教皇レオ14世は9月25日、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)で、外交官、研究者、青年の代表者らに、「人工システムに人間の思考力、つまり『知能』という名前を与え」る一方で、人間の思考や関係性が「人間性を失う」過程の中で貧困化するリスクにさらされていると警告を発した。
「計算システムが今や『知能』と表される一方で、私たちは、全ての人に内在する尊厳を認識できずに苦戦しているという矛盾がますます鮮明化しています。人間のいのちは効率性という基準に従って評価され、もはや生産性がないと判断されれば、拒絶されたり、切り捨てられたりするからです」
教皇はまず、人間を三つの現実で定義する。一つ目は、人間は、最初は子どもであることが求められ、全ての人にとって「誕生は根源的な絆を築きます。つまりその源と最初の教育の場が『家族』という『いのちの交わり』となるからです」と説明する。
二つ目は、人間は「全員が裸で、世話を必要とする姿」で生まれるが、この事実を「私たちは大人になるにつれて、忘れてしまうリスクがあるという現実です」。
そして教皇は、その弱さを忘れてしまうことは、いのちを「たまものとしてではなく、商品として考えることにつながる」と、警鐘を鳴らす。
三つ目に教皇は、「人類共通の記憶を保ち続ける」必要性を強調した。それと同時に、その可能性はしばしば「あらゆる形の悪と不正義によって損なわれる」ことがあるとした。
戦争は「最もひどい人間の作品」
人間は「土地を耕すことができますが、台無しにもしてしまいます。芸術作品を創造することもできますが、破壊することもできます」と教皇は述べ、戦争は「最もひどい人間の作品」で、究極的に科学を、「破壊や人を殺害するための非人間的な意思に従わせてしまいます」。
教皇はスピーチの中で、第2次世界大戦後にユネスコが設立された当時を振り返り、「科学の進歩が知恵から切り離されるとき、その進化は大量破壊兵器へと姿を変えることがあります」と懸念を示した。その一方でイデオロギーに支配された文化は偽のプロパガンダ(政治的宣伝)へと堕落し、真理が奪われた教育は、良心を操作するために利用されかねない、と強く警戒感を示した。
さらに、現代の課題の中には新技術との対峙があるとし、その技術を「新たな支配と不正義の手段とするのではなく、人類に奉仕し続けるものとしなければなりません」と教皇は主張する。
弱い立場にいる人にこそ思いやりを示す
人間は、遠く離れていても互いにつながる能力を手に入れたにもかかわらず、世界は「新たな形の孤独、物質的・霊的貧困、自暴自棄」を目の当たりにしている。
「通信は以前よりもさらに高速になりましたが、必ずしも信頼できるものではなくなりましたし、情報量は豊富ですが、知恵と同義にはなりません」
偽情報の増加と、意味のない言葉の流布を嘆きつつ、教皇はAIによってこれらの問題はさらに増幅してしまうと危機感を表した。
「AIのようなシステムはデータを相互に関連付けますが、生きた経験に根差した人間のいのちの意味に関する問いには答えることができません」「さらに人間は、意味を失っては生きていくことができません。意味は心の酸素だからです」
教皇はさらに注意を促す。真理がなければ、「言葉は暴力と、権力を持つ人の勝手な意思に支配されてしまいます。全ての科学が倫理観を持たずに探究されるなら、科学が持つ適切な意味を失うリスクが発生し、そうして技術が人間の尊厳に奉仕することと、その尊厳を反映することをやめてしまうリスクもはらむのです」。
教皇レオ14世は前任の教皇たちが呼びかけた、人間と被造物双方を思いやる「総合的な(インテグラル)エコロジー」という言葉を繰り返し使用し、胎児や戦地に生きる子どもたち、障害のある人、高齢者、移住者と難民、そして「非生産的だとして、傲慢にも排除された全ての人」を含む「最も弱い立場に置かれた人と、貧しい人」にこそ、思いやりが示されなければならない、と強調する。
「その人たちは、人間の尊厳を尊重するという私たちの主張を計る真の試金石です。その人たちの保護と援助は、被造物にも拡大せねばなりません」「これと相反する考えは、全てのいのちあるものからできる限り搾取し、保護せずに大量消費し、耕すことなく破壊するという搾取と略奪につながる考え方なのです」

