『ラウダート・シ』の精神を生きる シンポジウムと聖フランシスコ特別聖年記念ミサ
今年はアッシジの聖フランシスコ没後800年。その記念日であり、「すべてのいのちを守る月間」を締めくくる10月4日の前日である今月3日、「インテグラル(総合的な)・エコロジー」を考えるためのシンポジウムが岡山教会(岡山市)で開かれた。会場とオンライン合わせて100人余りが参加し、広島教区内での環境を守るための三つの実践発表に耳を傾けた。シンポジウム後、アッシジの聖フランシスコ特別聖年記念ミサもささげられた。
農園、家庭、学校、それぞれの環境問題への取り組み
シンポジウムに先立ち、司会の中井淳神父(イエズス会/ロクスひよりやまキャプテン、広島教区ラウダート・シ デスク指導司祭)が、南米アンデス地方に伝わる「ハチドリの伝説」を紹介した。
ある日大きな山火事が起こる。他の動物たちは手をこまねいているばかりだったが、小さなハチドリだけがくちばしに数滴の水をためては、火の上に投げ入れることを繰り返した。「そんな数滴の水でこの火を消せるわけがない」とアルマジロに言われたハチドリはこう答える。「分かっているさ。でも、僕は自分にできることをしているんだよ」(当日配布資料からの引用)
中井神父はこのハチドリが運ぶ水を「希望の水」だとし、各自「どんな『希望の水』を運ぶことができるだろう」とイメージしながら今日の発表を聞いてほしいと話した。
広島教区「平和の使徒推進本部」内に2022年に設けられた「ラウダート・シ デスク」の歩みの説明に続き、同教区のホアン・ドゥク・ロイ神父が登壇。ロイ神父は現在、一般社団法人日越交流赤磐農園(岡山県赤磐市)の責任者を務める。農園ではベトナム人青年らが中心となって農業を行い、収穫した野菜を分かち合い、一部は販売もしている。
農業を通じて、自然との共存や環境への責任を考えるようになったとロイ神父は話す。「信仰」「愛」「協力」「奉仕」の四つの柱で結ばれたこの共同体は、ベトナム人だけではなく、開かれた場所として、地域の人々との交流も行われている。

宇部教会(山口県宇部市)信徒の中村清子さん(62)は、家庭で日々取り組んでいる環境への配慮を紹介した。中村さんは2019年の前教皇フランシスコ訪日の際、東京カテドラル関口教会(東京・文京区)で開かれた「青年のつどい」に家族5人で参加。その時、思いがけない出来事が起きる。障がいのある長男が、フランシスコから祝福を受けたのだ。
「共に生きてきた長男と私たち家族の30年の歩みを丸ごと、『これでよし』とされたような瞬間でした」
この時の喜びが、前教皇フランシスコが回勅『ラウダート・シ』に込めた思いに応えたいという気持ちを芽生えさせ、行動の原動力となる。コロナ禍が始まると、まずマスクを手作りし始めた。コンポストでの肥料作りや、微生物の力で生ごみを分解する「キエーロ」の活用、たわし作りのためのヘチマ栽培、雨水の再利用、典礼暦を意識した庭造りなどに取り組んでいる。
長男のケアに必要な介護用品はどうしてもプラスチック製品が多いが、それ以外のものはできるだけ自然に返るものを選ぶようにもしているという。中村さんは「誰もがささやかな行動によって神様の協力者になれる」と話し、「これからも家族とともに、神様と同じ(ともに暮らす地球を大切にするという)『夢』を見ていきたい」と話した。
最後に、岡山県倉敷市の清心女子高等学校(設立母体:ナミュール・ノートルダム修道女会)の高校2年生二人が発表した。同校敷地内の竹林でのフィールドワークや、タケを使った地域向けワークショップ、タケに含まれる成分を抽出・分析した結果を分かち合った。同校は文部科学省から、理数教育を重点的に行うSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けている。
同校では生徒らが、日本中に生息するタケには三つの課題があると分析。①放置された竹林が生態系に影響を及ぼす「竹害」②タケの機能性への理解が不十分で、タケ製品の利活用が進んでいない③加工段階で使用される部位が限られ、利用されないまま表皮粉などが処分される―の3点。これらを出発点として2021年、地域の人々に向けて校内のタケを使った炭作りや野外炊事のワークショップを開いた。24年3月からは「清心里山教室」と名前を変え、現在も続けられている。
また二人は、利用されないことが多いタケの表皮に着目し、その成分を研究・分析した結果を説明。表皮に含まれる成分から、はっ水性のある天然のコーティング剤への応用の可能性を見いだすことができた。今回の分析結果が、将来的には竹害への有効な解決案、地域資源の価値創造に役立つことが期待されるとし「私たちも自分たちにできることを大切にして、これからも研究を続けていきたい」と話した。
一人一人がハチドリの役割を果たす
記念ミサは、成井大介司教(新潟教区/日本カトリック司教協議会ラウダート・シ部門担当司教)が主司式した。ミサの冒頭、白浜満司教(広島教区)は「一人一人がハチドリの役割を果たすことができるように」と述べた。
成井司教は説教で、この日読まれた福音(マタイ11・25―30)のイエスの言葉、「わたしの軛を負い、わたしに学びなさい」は、「イエスと共に歩み、イエスの『人』や『自然』とのつながり方、イエスの愛の表し方を学びなさい」という呼びかけだと説明した。
そして前教皇フランシスコが『ラウダート・シ』で、環境危機の一番の被害者は貧しい人々だと説いたことに触れ、成井司教はこう問いかけた。
「私たちは貧しい人たちが本来持っているべきものを取り上げていないでしょうか。私たちが壊した地球のバランスのために、貧しい人々の生活を、いのちを壊していないでしょうか」
成井司教は、世界にはさまざまな困難や環境問題があるが、神が共に歩んでくれることに感謝し、賛美して、課題に取り組むようにと説教を結んだ。

