独の司教、米とメキシコの国境都市訪問 ベルリンの壁を想起し、人道状況を憂慮

目次

独の司教、米とメキシコの国境都市訪問 ベルリンの壁を想起し、人道状況を憂慮

【ハンブルク(ドイツ)9月8日OSV】ドイツ司教協議会の移住者委員会の委員長で、ハンブルク教区のシュテファン・ヘッセ大司教は8月20日から27日まで、メキシコのシウダーフアレスと、そこと国境を接する米テキサス州のエルパソの両教区を訪問し、そびえ立つ要塞ようさいのような壁とレーザーワイヤーが、この二つの共同体を隔てている様子を見て、母国ドイツの痛みを伴う記憶を思い起こした、と語った。
 「ある意味、この非人間的で大規模な構造物を見て、ベルリンの壁を思い起こしました。ベルリンの壁は30年近くもドイツの首都ベルリンを隔て、その一帯に住む人々に大きな苦しみを与えていました」と大司教は8月31日、OSVニュースの取材に答えた。
 この訪問を振り返り、「国境沿いの状況は憂慮すべきものだと感じました」「本来なら協力し合い一つになっていたはずの二つの都市――そこの市民たちは、多くの方法で依然としてつながり合っています――は今や、壁とレーザーワイヤーで遮断されたかのように分断されています」
 ヘッセ大司教の訪問の目的は、主要な移住経路沿いの人道状況を視察するためで、訪問中は多くの移住者、ボランティア、支援団体の代表者、地域と教会の指導者たちと会い、話し合いをもった。
 ヘッセ大司教は、OSVニュースに、米国が国境を制限する政策にかじを切ったため、かつては「移住者を生み出す側で、移住経路」であった国が、今や「移住者の目的地」となり、同時に「米国から」の強制送還という新たな課題に直面していると語った。

 全シェルターの80%を教会が運営

 また大司教は、訪問中に印象に残った出会いが二つあったという。一つはメキシコの「タパチュラにある教会が運営する『ベツレヘムシェルター』にいた、キューバ出身の高齢の紳士」。
 「その紳士は米国に46年間住み、仕事をし、社会に溶け込んでいました。ところが現在は、メキシコ南部へ送還されました。見知らぬ土地に移送されては、その高齢にふさわしい尊厳のある生活は見込めません。彼の運命は、根こそぎ倒された木の運命のようです」
 二つ目は、シウダーフアレス出身の若い男性で、さらに若い頃は組織犯罪に手を染め、危険な国境沿いで密輸入の手引きをする「スマグラー」として働いていたという。
 「この男性は私に心を開いてくれ、信仰の助けを借りて、どのようにして最終的に組織犯罪の支配から、いのちからがら逃げ出したかを語ってくれました。彼は現在、若い移住者がメキシコでどうにかしていけるよう手助けをしています」と大司教は語った。
 国境沿いにいる人々が苦しむ中、ヘッセ司教は「教会の奉仕がなければ、状況はさらに悪い状態になる」という言葉を耳にしたし、自身の目でも確かめた、とOSVニュースに述べた。
 「シェルター全体の約80%を教会が運営しています。そこで難民や移住者たちは、住む場所を提供されるだけでなく、人間としての尊厳も尊重されています」
 「移住者を規制するのは国の責任であることは言うまでもありません。けれども今回のメキシコと米国への訪問中、移住者はただの安全保障上の問題としてしか扱われていない状況を目撃しました。人間性という基本的な感覚が失われているのです」

 「教会の中に国境はない」

 しかし大司教は、訪問中にひときわ際立ったのは、リオ・グランデ川を挟んだ両岸に住むどちらの人々も、自分たちを一つの大きなカトリック共同体だと考える「霊的側面」だと述べた。
 「米国司教協議会の移住問題委員会の前委員長を務めたマーク・J・ザイツ司教とシウダーフアレス教区で、メキシコ人、米国人、移住者と共に、素晴らしいミサを共同司式した時、ザイツ司教は端的に『教会の中に、国境はない』と言われました」
 ヘッセ司教は、米国での移住者の危機と、欧州での、特にスペインの飛び地のセウタや地中海沿岸国での緊張感の高まりを比較しつつ、ほとんどの状況において、「法の統治と人権の尊重に対する意識が低下している」と懸念を表した。
 「裕福な国々が、主に移住者の抑止と移送に力を入れ始めると、人道上の責任を果たすことをせず、人間の尊厳の尊重を忘れてしまう危険を冒します」
 保護を求める人々に安全な経路を保証しつつ、その一方で「開発協力のために、十分な資源」を投入することは、母国を離れざるを得なかった人々へのリスクを低減し、「強制的な移住問題の根本原因」に対処することにもなる、と大司教は訴える。
 「北米や欧州の先進国に住む人々には、その人々なりの問題があるでしょう」とヘッセ大司教は理解を示し、「それでも、世界の他の地域で起きている状況を心にとどめておくことは重要なことです」と強調した。
 「米国人として、また欧州の国の人として、このような愛の模範について熟考し、それらに心を動かされるなら、無関心になったり、自分本位になったりする私たちの性質を乗り越えられるはずです」と大司教は力を込めた。

メキシコのシウダーフアレス教区と米テキサス州のエルパソ教区への視察後の8月25日、米国とメキシコを隔てる国境沿いのフェンスから向こう側を眺める、ドイツ司教協議会の移住者委員会の委員長を務めるシュテファン・ヘッセ大司教(ハンブルク教区) (OSV News photo/Daniela Elpers, courtesy German Bishops Conference)
  • URLをコピーしました!
目次