第4章 変化の中で人間を保護する 真理、労働、自由
5月25日に発表された教皇レオ14世の初の回勅『人間の偉大さ―AIの時代における人格の擁護』(マニフィカ・ウマニタス)各章の要約を紹介する 5 回連載。回勅の公式訳は 9月末、カトリック中央協議会から上記タイトルの書籍として発行されました。要約の原文と図版は、バチカンの総合的人間開発省が公開したものをカトリックジャパンニュースが訳したものですが、書籍発行を受け、今回から引用部分等に公式訳を取り入れています。
回勅の第4章は、デジタルテクノロジーによる社会・経済の在り方の変化が、個人の生き方と社会生活に及ぼす影響を考察しています。その際、人間性を守っていく上で、今日、特に懸念される三つの主な領域があるとして、真理、労働、自由を挙げています。
そこで示されるのは、人工知能やデジタルテクノロジーが単に道具に関係するだけでなく、次第に人の行動様式や人間関係、そして社会的共存の仕組みをも形作るものになっていくということです。
真 理
守るべき人間性の特徴として、最初に取り上げられるのは真理です。民主主義社会において不可欠な共通財として認識されているものです。
デジタルテクノロジーによってつくり出される環境世界では、操作された情報や改ざんされた画像、偏った言説が拡散されることで、真実と虚偽の境界が曖昧になる危険性があります。
このことに関して回勅が注目するのは、真実の情報は、中央集権的な、また自動化された管理から生まれるものではなく、信頼関係や責任を共有する実践から生まれるということです。「公共的コミュニケーションの質は社会的信頼性に直接依存し、またそれに影響を与えるからです」(132)。
真理は常にもろさを兼ね備えています。だからこそ、批判精神を養う教育と、責任ある技術使用を通じて守られなければならないのです。
労 働
人間性を特徴づける第二のものは労働です。労働は、人間の尊厳の基礎をなすもので、人が社会生活に参加するための通常手段であると述べられています。
機械やシステムが自動で処理を進める仕組み(オートメーション)や人工知能は、労働の領域を実効的に変える手段を提供しますが、同時に、それらは不安定さや排除を生み出すという重大なリスクをも伴います。
回勅は、そこで、開発というモデルに対して警鐘を鳴らします。
「AIは、日常作業を引き受けることによって生産性を向上させると約束しながらも、機械が労働者を支援するように設計されるのでなく、しばしば、労働者が機械の速度と要求に順応することを強いられます」(150)。
効率が支配的な基準になると、労働は、人間的な価値や人間に関係するものの価値を失うリスクを伴うようになるのです。
自 由
最後に、回勅は、人間性を特徴づける自由を取り上げます。自由は、今、デジタル依存や大量データ収集に基づく、新しい形態の社会統制によって脅かされています。テクノロジーは、目に見えない仕方で、人の選択や行動を左右し、真に自由な意思決定の余地を狭めてしまいかねません。
このような理由から、回勅は、はっきりと「デジタル時代における自由は、単なる内面的なことがらではなく、公共の問題でもあります」(171)と言います。自由は、公正なルールと責任の共有、そして教育を必要とするのです。
共同の取り組みへ
これら三つの特徴(真理、労働、自由)は、デジタルテクノロジーによる社会・経済の在り方の変化が中立的なものでないことを示し、本当に人間らしい生活を可能にする条件である真理、ふさわしい労働、そして真の自由を守るためには、共同の取り組みが必要であることを示しています。
(第5章〈最終回〉は次号掲載予定)

