日常を取り戻そうとするガザ 枢機卿、訪問後の記者会見で

【エルサレム12月22日ОSV】イスラム組織ハマスとイスラエル軍の2年に及ぶ戦闘の後、パレスチナ・ガザの悲惨で複雑な状況にもかかわらず、人々は普段の生活を取り戻したいと心の底から望んでいる、と先週末にガザの聖家族小教区への訪問を終えた、ラテン典礼エルサレム総大司教のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿は12月22日、毎年行われるクリスマスの記者会見の席で語った。
 「2年に及んだ戦争の後、普段の生活に戻ろうとする圧力のような雰囲気があります。もちろん、戦闘はいまだに続いているし、さまざまな問題も山積しています」とピッツァバッラ枢機卿は語る。2年の間、生き残ることに必死になってきた、今や500人近くまで減った同小教区の信者たちは、将来に対する疑問を持ち始めている、と同枢機卿は続けた。
 「通常の生活に戻りたいという強い思いを感じました。ですから、将来や私たちの共同体について語りたいのだと思います。クリスマスを喜びの中で迎えたいと願っていました。同時に、この2年間は感じる余裕もなかったあらゆる問題が表面化し始めています。将来に対する疑問が、とても具体的な形で現れています」
 この小教区に残る信者の何人かは、この地を離れることを考え始めているが、その一方で、この状況がどのようになっていくのかを見守りたい思いもあるようだ、と同枢機卿は語り、他国へ避難したとしても、その生活は必ずしも容易ではないと指摘した。そして、ガザにとどまる信者数が、今までよりも激減してしまうのではないかと懸念を表した。
 けれども「このような状態にもかかわらず、いつも喜びにあふれる」ことができるこの小教区の人々、特に子どもたちから学ぶことがある、とピッツァバッラ枢機卿は驚きを隠さない。

 人間がもたらした破壊から再建へ

 米国などに仲介された停戦合意は脆弱(ぜいじゃく)だが、「今は前を向く時で、この戦争による悲惨な結果にばかり目を向けている時ではありません」と同枢機卿は強調する。
 記者からの質問に答えて、「この停戦合意は、人々が考えるほど単純なものではありません。けれども、この案しか私たちにはありません。さまざまな困難や誤解があっても、この案に沿って進めていくしかありません」とピッツァバッラ枢機卿は期待も込める。
 教会が政治的疑問に直接関わることはないが、暴力の行使には反対すると同枢機卿は毅然(きぜん)として語る。「暴力がもたらした結果はこの通りです。ですから将来に関しても、あらゆる暴力に私たちは反対していきます」
 いくつかの店舗やレストランは再開しているが、提供する物がない時もある。大学も授業の再開を試みているが、それも安定しない。
 ガザの飢饉(ききん)は解消され、食料も手に入るようになったが、多くの人が職を失い、現金を持ち合わせていない。国連組織をはじめ、カトリック救援サービスやラテン典礼総大司教座は、とりわけ貧しい人々に支援を提供してきたが、最も必要とされている医薬品、医療用機器、抗生物質を提供することが、現在の最優先事項だと同枢機卿は説明する。
 人間という観点から見ると、今は希望について語ることは難しいかもしれないが、クリスマスは希望の祭日だとピッツァバッラ枢機卿は語り、「この現実を前にして、非難したり、弾糾したり、責めたりするだけではいけません。そうではなく、再建に力を注がなければなりません。この人間が引き起こした破壊からの再建を望む人にならなければならないのです」と締めくくった。

クリスマスに先駆けた司牧訪問中の12月21日、ガザにある聖家族教会でミサを共同司式し、マルクと名付けられた赤ちゃんに洗礼を授けるラテン典礼エルサレム総大司教のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿 (OSV News/courtesy Latin Patriarchate of Jerusalem)
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