平和を訴えレバノン訪問終える 教皇、「攻撃と敵対」終結を訴え

【ベイルート(レバノン)12月2日CNS】教皇レオ14世は12月2日、「心からの叫びとして、攻撃と敵対が終わるように」と訴え、レバノン訪問を終えた。
 「武力闘争は何の利益ももたらさないことを私たちは認めなくてはなりません」と教皇はローマへ帰還する前に、ベイルートの空港で強調した。「武器は殺傷するだけですが、交渉と仲介と対話は建設的です。私たちは平和を目標としてだけでなく、道として選びましょう」
 教皇レオは11月30日から12月2日までのレバノン訪問中、平和と正義の実現を繰り返し呼びかけ、全てのレバノン国民による一致した努力で、自分たちと家族のために、より良い未来を築いていくよう促してきた。
 教皇は2日の野外ミサ後の「お告げの祈り」を唱える前に、こう宣言した。「私はもう一度、国際社会に求めます。あらゆる努力を惜しまず、対話と和解へのプロセスを推進してください。ここレバノンと戦争や暴力に苦しむ全ての国で政治的、社会的権威のある人々に、私は強く訴えます。平和を求める皆さんの国民の叫びに耳を傾けてください」
 「中東地域は新たなアプローチを必要としています。それは復讐(ふくしゅう)と暴力の論理を退け、政治的、社会的、宗教的な分断を乗り越えて、和解と平和の名のうちに新たな時代を開くためです」と教皇は続ける。「私たちは方向を転換する必要があります。私たちの心に平和を教え込む必要があるのです」

12月2日、レバノン訪問最終日にベイルート国際空港で、最後のあいさつをする教皇レオ14世。右はレバノンのジョゼフ・アウン大統領 (CNS photo/Lola Gomez)

 爆発事故の現場訪問とミサ  「レバノンよ、立ち上がれ」
 
 教皇レオ14世のレバノン訪問最終日の朝6時半には、ベイルートのザイトゥナイ湾上空に二重の虹が架かっていた。
 教皇は当日の日程を、フランシスコ会系の女子修道会が運営する精神科病院の訪問から始めた後、ベイルートの港で2020年に発生した大規模爆発事故の現場を訪れて祈った。事故では200人以上が死亡し、約7000人が負傷、およそ30万人が家を失っていた。
 教皇レオは同日午前にベイルートの海岸沿いでささげたミサの説教で、こう語った。レバノンの美しさは「貧困と苦しみ、そして歴史に刻まれてきた傷によって暗く曇らされています。その中で、私は祈るために、港の爆発があった場所に赴きました」。
 「その美しさは、皆さんを苦しめてきた多くの問題によって暗く曇っています。脆弱(ぜいじゃく)で、しばしば不安定な政治状況、大規模な経済危機は皆さんの上に重くのしかかり、古来の恐怖をよみがえらせる紛争があります」と教皇は特定の事案を挙げずに付け加えた。
 当日の福音箇所(ルカ10・21~24)は、こう始まる。「そのとき、イエスは聖霊によって喜びにあふれて言われた。『天地の主である父よ、あなたをほめたたえます』」(21節)
 教皇レオ14世はミサに参加した約10万人の信者に、神を賛美することは必ずしも常にできることではないと語りかけた。
 「時として、人生の困難に打ちひしがれ、私たちの周りの数多い問題に心を奪われて、悪を前にした無力感に身がすくんでしまい、あまりにも多くの困難な状況に押しつぶされそうになってしまうと、私たちは心に驚きを覚えたり、感謝したりするよりも、諦めや嘆きに向かうようになります」と教皇は続ける。
 それでも、教皇は信者に思い起こさせる。福音は「夜のただ中に小さく輝く光を見いだすよう私たちを招いています。それは、私たちの心を感謝に開かせて、この地のために共にする決意へと私たちを駆り立てるためです」。
 レバノンのキリスト者の信仰と愛、他宗教の信者との対話と協力に向かう姿勢は、その全てが「真夜中に輝く小さな光であり、育っていく小さな新芽、歴史上のこの不毛な庭に植えられた小さな種なのです」と教皇はたたえる。
 「こうした新しい芽を育てていきましょう」と教皇は呼びかける。それこそが、落胆に陥る傾きを避けて、「暴力の論理や金銭崇拝に屈することなく、はびこる悪を前にして諦めてしまわないため」の方法だと説明する。
 「レバノンよ、立ち上がってください」と教皇レオは強く呼びかける。「正義ときょうだい愛の家となってください。レバント全体のために平和の預言者的しるしとなってください」。レバントは、伝統的に地中海東部沿岸地方を指す言葉で、現在のトルコ、レバノン、シリア、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンに当たる。

教皇レオ14世は12月2日、レバノン訪問最終日にベイルートの海岸沿いで、約10万人の会衆を前にミサをささげた (CNS photo/Lola Gomez)


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