【エルサレム10月6日OSV】イスラエルとイスラム組織ハマスによる間接停戦交渉が10月6日、仲介国エジプトのシャルムエルシェイクで始まり、米国のドナルド・トランプ大統領の和平案に基づいた停戦合意を目指すことを受け、ラテン典礼エルサレム総大司教のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿は、この交渉を「重要で長く待たれた最初の一歩」と歓迎した。
ただ同枢機卿は、「まだ何も確定しているわけではない」と注意を促す。
「多くの問いがいまだに答えを得られず、たくさんのことが解決されていません。私たちは失望すべきではありません。それでも、何か新しく建設的なことが見え始めていることに喜びを覚えています」とピッツァバッラ枢機卿は10月4日、発表した声明で述べている。
同枢機卿は教皇レオ14世が10月11日を平和のための断食と祈りの日とするよう呼びかけていることに触れ、エルサレム総大司教座も、保護聖人であるパレスチナと全聖地の元后、聖母マリアの記念日が20日後に近づく中、平和へのとりなしを願う祈りを改めてささげると付け加えた。
「戦争の終わりが必ずしも平和の始まりになるとは限りませんが、それでも、平和を築き始めるために欠かせない最初の一歩となります。前途には長い道のりが残っています。それは私たちの間で信頼を再構築し、希望に手応えを与えて、私たち自身をここ数年の憎しみから解放するためです。このために私たちは、まだここで違った未来を思い浮かべることはできると信じる多くの人と共に力を尽くします」とピッツァバッラ枢機卿は強調する。
戦争による犠牲と傷と飢えは「恥辱」
米国とイスラエル、ハマスの代表団がエジプトを訪れ、発生から2年になろうとするガザでの戦闘を終わらせるための和平合意を目指す。紛争の発端は2023年10月7日のハマスによるイスラエル南部の共同体に対する奇襲攻撃で、1200人が死亡し、250人が人質としてガザに連れ去られた。人質のうち48人がいまだに解放されておらず、およそ20人はまだ存命だと考えられている。
ハマスが運営するガザの保健省によると、民間人と戦闘要員の区別はないが、これまでに6万7000人以上のパレスチナ人が死亡したという。
「この戦争が本当に終わるのかは分かりませんが、はっきりしているのは、紛争はまだ続くということです。根本的な原因には手が付けられていないからです」とピッツァバッラ枢機卿は指摘する。さらに前途には多くの課題が残されたままで、その中にはヨルダン川西岸の状況悪化があり、特にパレスチナ人が住む小村が日常的に続く入植者たちによる攻撃から守られていないことを付け加えた。
聖地と世界中で暴力が破壊してきたのは土地だけでなく、「多くの人の人間的な心」だと同枢機卿は続ける。「怒りと恨み、不信感と憎しみ、蔑み」ばかりが話題に上り、「私たちの心を汚しています」と同枢機卿は嘆く。苦しみに慣れてしまう危険が増しているとする。
「全ての失われたいのち、全ての負わされた傷、全ての強いられた飢えは、神の目には恥辱として映っています」
