エルサレムの「お眠りの聖母」大修道院 中東情勢一変で避難する巡礼者

【エルサレム6月24日OSV】スザンヌ・ラッシュマンさんは6月11日にドイツからイスラエルに到着し、「平和の建設者としての女性—サラとハガルとマリアの娘たち」と題した13日間の研修講座に参加する準備に入っていた。講座は14日夜からエルサレム旧市街にあるノートルダム・ド・シオン修道女会の修道院で始まる予定だった。
 ところが、平和について学ぶ代わりにスザンヌさんと夫は13日の朝早く、ベネディクト会の「お眠りの聖母」大修道院ベイト・ヨセフ来客宿舎の防空壕(ごう)に駆け込むことになる。イスラエル軍がイランの核施設への先制攻撃を始めたからだった。
 「私は今まで空襲警報も爆発音も聞いたことがありませんでした」とスザンヌさんは言う。イスラエルとパレスチナには20回も来ていて、ここに友人たちもいれば、紛争の「長くて錯綜し、多様な視点を必要とする複雑さ」も理解しているつもりだった。
 イスラエルが空路を封鎖したことでフライトは全てキャンセルされ、ラッシュマン夫妻は他の8人の来客たちと共に「お眠りの聖母」大修道院で足止めを食うことになった。スザンヌさんが新約聖書学者としてトリエル教区の黙想・聖書養成カトリックセンターで副所長を務めるドイツ南部に帰る方法はなくなる。

 今こそ平和のために祈り、選択する時
 
 ただ、スザンヌさんにとって個人的に一番の打撃となったのは、女性の平和建設者についての講座に参加できなかったことだった。今だからこそ、どうしても学びを深める必要があったからだと彼女は説明する。
 「私たちが計画していたことは、とても緊急に必要だったし、特に女性の視点から平和の建設を考えることが必要だったのです」とスザンヌさんは強調し、講座には平和の建設を考えるユダヤ教とイスラム、キリスト教の女性たちが参加する予定だったことを明かした。「私たちは考えています。女性たちは平和の建設や紛争の解決を試みる対話の中で違った動き方ができると。でも今では、これは後回しにされているようです。今この時は平和の建設者の時ではないかのように。そして私は無力感を覚え、とても残念に思っています。今すぐには言葉も出てきません」
 ベネディクト会のニコデムス・シュナーベル大修道院長は、今回の交戦は院内の修道者全員が共に聖霊降臨を祝った後、まもなく始まったと語った。ただ修道者のほとんどは休暇のため帰宅していて、6月24日の時点では、自身を含む3人が残っているだけだと説明した。聖霊降臨前の来客は既に帰宅した後だという。
 フランシスコ会聖地管理特別管区長のフランチェスコ・パットン神父は6月18日、全世界に向けて平和のための祈りを呼びかけていた。祈りだけが使うことのできる唯一の「武器」だとしている。
 「祈りは破壊を引き起こさず、死ももたらさず、流血も招きません。その代わりに人々の良心に善意を芽生えさせます。ですから私は、聖地を思ってくださる全ての皆さんに、平和のために絶えず祈るようお願いします。私はさらに、政治の世界にも平和のための選択をするよう求めます。聖フランシスコは彼の時代の権力者たちに、いつの日か彼らは神の裁きに向き合わなければならないと告げていました」とパットン神父は強調した。

6月19日、エルサレム旧市街のシオンの丘にある「お眠りの聖母」大修道院内の防空壕(ごう)に入ったスザンヌ・ラッシュマンさんと同大修道院長のニコデムス・シュナーベル神父(OSV News photo/Debbie Hill)


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