【エルサレム6月17日OSV】イスラエルとイランのミサイル攻撃の応酬が5日目に入り、現地のカトリック教会指導者は聖地と中東地域での平和を求め、さらなる流血の制止を訴えている。
「私たちは新たな悪夢に陥っているように思われます」とフランシスコ会聖地管理特別管区長のフランチェスコ・パットン神父は6月16日、バチカンニュースが配信したインタビュー記事で語った。「最初は周辺地域で起こった戦争による破壊を目にしましたが、今は聖地の中心で目の当たりにしています」
6月17日には、イスラエル軍の戦車がパレスチナ・ガザ南部ハンユニスで援助物資を受け取ろうとしている人々に向けて発砲し、医療関係者によると少なくとも59人が死亡したとロイター通信は報じた。「食料を得ようと必死の住民に対する暴力行為の中でも最悪の事件」になったとしている。
ガザで唯一のカトリック小教区である聖家族教会主任司祭のガブリエル・ロマネリ神父は、ガザでのパレスチナ人の苦しみが忘れ去られようとしていると危惧する。
世界の注目がガザからイランへと移っていく中、ロマネリ神父はガザでの状況は絶望さえも超えていると嘆く。
「目は見ても見ず、心は聞く耳を持ちません」と6月16日、ロマネリ神父は悲惨な状況への無関心について、イタリア司教協議会が運営する通信社「SIR」(エッセイエッレ)によるインタビューで語った。
「誰も(ガザでの戦闘について)話しません。世界の関心は薄れてしまったようですが、ここでは毎日、戦闘があり、人々は終わりのない悲劇を体験しています」とアルゼンチン出身の同神父は訴える。
6月16日のフランスの「ルモンド」紙の報道によると、ガザの防衛当局はイスラエル軍が南部ラファの援助物資の配給所で食料を得ようと待っていた人々に向けて発砲し、20人が死亡したと発表した。イスラエル軍は事件について調査中だとしていると「ルモンド」は報じた。
「ローマ(ガザより少し人口の多い)のような都市を思ってみてください。そこで住民たちが三つか四つの離れた場所にある配給所まで食料を取りに行かねばならないのです。どこに行くにも困難と危険が伴います。私たちが今日ガザで目にしているのは恥ずべきことです」とロマネリ神父は「SIR」に語った。
エルサレム総大司教、「政治的弱点」に言及
イスラエルは6月13日、イランの核関連施設などに先制攻撃を仕掛け、イランの核兵器開発の企図は「イスラエルの生存自体を危機にさらしている」と警告した。
イランが報復としてイスラエルのテルアビブやハイファにミサイル攻撃を加える前に、ラテン典礼エルサレム総大司教のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿は、イスラエルによる先制攻撃がもたらす結果は「現時点では予測が付かない」と語っていた。
「どのような反応がイランから来るかを理解する必要があります」とピッツァバッラ枢機卿は6月13日、イタリア司教協議会が運営するテレビニュース番組「TG2000」(ティジドゥエミラ)のインタビューで指摘した。
「間違いなく反撃があるでしょう。その規模や実際に起こる結果について見定めていかなければなりません。こうした行動は緊張緩和に結び付かないのは明らかです」と同枢機卿は断言した。
ピッツァバッラ枢機卿は付け加える。「私たちは皆、戦争に疲れ切っています。それなのに私たち全員が悪循環に巻き込まれているのです。軍事力に訴える姿勢は政治的な弱みがあることのしるしでもあります」
同枢機卿は特定しなかったが、イスラエルのベニヤミン・ネタニヤフ首相の政治的な行き詰まりに言及したと思われる。実際、最近も同首相の政権は野党勢力が提出した議会解散法案により崩壊の危機にひんしていた。
