教皇、聖霊降臨の主日ミサ 壁と境界と憎しみを消し去る

【バチカン6月8日CNS】戦争に傷つく世界で人々がつながりを欠き、無関心に陥っている中で、教皇レオ14世は聖霊が「境界を取り払い、壁を打ち壊して」、憎しみを解消してくださり、誰もが一つの人類の家族の一員として生きられるようにと祈った。
 「聖霊は障壁を打ち破り、無関心と憎しみの壁を打ち倒してくださいます」。聖霊は「主があらゆることの核心と頂点に据えられた愛のおきて」を教え、心に刻んでくださるからだと教皇は説明する。
 「愛のあるところでは、偏見が生まれる余地はありません。隣人から離れる安全な距離も、排他的な発想もありません。残念なことに、今は政治的国家主義にもそうした傾向が現れています」と教皇レオ14世は6月8日、バチカンのサンピエトロ広場でささげた「聖霊降臨の主日」のミサ説教で指摘した。
 教皇はさらに、特定の人間関係における「不健全な支配欲」や暴力、イタリアで「数多く最近、起きている女性殺害事件」について「非常な心痛を覚えています」とも語った。
 同国では前日7日までの48時間で3人の女性が夫またはパートナーによって殺害されている。今年初め以来、少なくとも22人の女性が殺害され、そのうち10人がパートナーまたは元パートナーによって殺されたと6月6日、イタリアの「ラ・スタンパ」紙は報じた。イタリア政府によると、2022年から24年までの間に平均で100人の女性が家族などによる故意故殺で亡くなり、同じ期間でパートナーまたは元パートナーに殺された女性は年平均68人だという。
 「これに対して、聖霊は私たちのうちに、良好で健全な人間関係を育ませてくれる実りをもたらしてくださいます」と教皇は強調する。

 教会を「全ての人を受け入れる場」に
 
 教皇レオ14世はミサ説教で、「聖霊は何よりもまず、私たちの心の中にある境界を取り払ってくださり」、続いて他者との関係、そして人々の間の関係にある境界を取り払ってくださると指摘した。
 「聖霊は私たちのいのちを愛へと開いてくださるたまものです」。聖霊は「私たちの心のかたくなさや心の狭さ、利己主義、私たちを抑えつける恐れ、自分のことしか考えないナルシシズム」を打ち破ってくださる、と教皇は続ける。
 「聖霊は私たちを個人主義に巻き込まれて萎縮した生き方に陥る危険と向き合うよう突き動かされます。悲しいことに、なぜか私たちは急速に発展する『ソーシャル』メディアの世界で、かえってより孤独に陥ってしまいます。いつもつながっているはずなのに、『ネットワーク』がつくれないのです」と教皇は警鐘を鳴らす。
 そんな中、聖霊は「私たちが着けているマスクの奥にある自分自身と出会わせてくださいます。主のたまものである喜びを体験させてくださることで私たちを主との出会いに導き、私たちの人生を憩いの場としてくださいます」。
 さらに聖霊は「私たちの人間関係の境界を広げて、きょうだい愛の喜びに心を開かせてくださいます。そして、このことは教会にとっての判断基準になります」と教皇は説明を続ける。
 真に主の教会となるためには、「私たちの間に境界や分裂があってはいけません」と教皇は強調する。信者たちは「教会内で対話を進め、互いに受け入れ合って違いを克服する」ことで、教会を「全ての人を受け入れて大切にする場とするのです」。

6月8日、バチカンのサンピエトロ広場でささげた「聖霊降臨の主日」のミサの最後にほほ笑む教皇レオ14世。このミサで「教会運動体・諸団体・新しい共同体の祝祭」を締めくくった(CNS photo/Lola Gomez)
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