【エルサレム5月5日OSV】パレスチナ・ガザで悪化するばかりの状況を常に憂慮していた教皇フランシスコは、最後の時に自身の専用車(パパモービレ)をカリタスエルサレムに譲って、ガザの子どもたちのための移動診療所に改造するよう依頼していた。
この移動診療所の準備は5月中旬にも終わるとカリタススウェーデンのピーター・ブルーネ事務局長は明らかにした。カリタスエルサレムのアントン・アスファル事務局長と共に2月から構想を練ってきた。
ブルーネ氏は2月に、アスファル氏の提案でヨルダン川西岸のベツレヘムを訪れ、2014年の教皇フランシスコの聖地訪問で使われてから現地に保管してあったパパモービレの状態を見た。
教皇フランシスコはスウェーデン・ストックホルム教区司教のアンダース・アルボレリウス枢機卿からの提案にすぐに応じていた、とブルーネ氏は電話インタビューで語った。
「ガザの子どもたちを緊急に助ける必要があります。3月2日から救援物資の搬入が完全に遮断されているからです」とブルーネ氏は続ける。「私たちの子どもたちを、こんなふうに扱ってはいけないのです」
食料や水、医療ケアの供給が絶たれてしまえば、真っ先に苦しむのは子どもたちで、感染症や本来は予防可能な状況のために生命の危険にさらさられることになる、とカリタススウェーデンとカリタスエルサレムは報道発表で強調している。
ブルーネ氏は報道発表の中で、パパモービレの診療所に期待されるのは、「ガザの保健衛生体制がほぼ完全に崩壊している時に、目に見える救命手段となること」だと説明している。
移動診療所に乗り込むのは運転手と医師らで、診断、検査、治療用の器具が積み込まれ、感染症の応急検査キット、縫合処置用具、注射器と針、酸素吸入器、ワクチン、医薬品冷蔵庫も備えている。ガザへの人道回廊が再開すればすぐに出動できる。
教皇のガザへの思い示す「希望の車」へ
「この車両には、教皇様が最も弱くされている人々に示していた愛と思いやりと寄り添いが表れています。教皇様がこの危機の間ずっと表されていたことです」とアスファル氏は報道発表の中で強調している。
ガザでの戦闘勃発以来、教皇フランシスコは現地の聖家族小教区に毎晩、電話をかけて主任司祭のガブリエル・ロマネリ神父ら司祭たちと話し、小教区の構内に避難している小教区共同体を支える気持ちを伝えていた。
教皇フランシスコは4月20日、最後となった復活祭メッセージで、即時停戦とイスラム組織ハマスが拉致している人質の解放を訴え、「飢えている人々や平和な未来を望む人々」を援助するよう求めていた。
移動診療所が伝えるメッセージの主旨はガザの子どもたちは忘れられてはいないということだ、とブルーネ氏は強調する。移動診療所は「希望の車」と呼ばれることになると付け加えた。
「移動診療所は希望のメッセージを運ぶのです」と同氏は説明する。「子どもたちは教皇様の椅子に座って、奇跡そのものとして扱われるのです。教皇様がガザの子どもたちの状況への関心を集めようとされていたことを、これほど象徴的に示すことはありません」
