短歌・俳句 3月
◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ
久々の便りが届く午後三時封緘に見し十字のしるし はっとりゑぬ
【評】届いた手紙の封緘(ふうかん)を「十字のしるし」に見たところに独自性があり、手紙の内容がとても意味あるものに感じられます。午前中でなく「午後三時」との時間設定にも意図があるのでしょう。読み手の想像が広がります。
納沙布の岬に立ちてつひに見し祖母(おほはは)住みし秋勇留(あきゆり)の島
東京 植竹 雄太
はらはらと光あつめて散る銀杏ロザリオ手繰る緩き坂道 東京 向井美和子
冬の朝晴れて筑波の峰ふたつはるかに望む時を恵まる 東久留米 平山 努
植木屋の刈込み済みし庭に見る水仙のみどり万両の赤 秦野 遠藤 伸枝
熊の噂に庭の柿の実みな落とす隠れいし小鳥は残せと叫ぶ 那須塩原 林 秀雄
雲間より光の束が注がれる天に通じるヤコブの梯子 名古屋 富井 弘光
悔ひ多し楽しき思ひ出もまた多し主と会話せり眠れぬ夜は 秋田 進藤八重子
思春期のわれへと誘う道しるべタルトタタンの飴色りんご 岡山 宮崎 清子
聖堂の扉に熊の絵が張られきちんと閉めてと文字が促す 秋田 畑山真理子
(作品の応募方法は短歌応募フォームをご覧ください)
◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎
◎雪しきり絵画となりしガラス窓 福岡 徳永 朝子
【評】窓枠が額縁となり雪景色が名画となった
◎姥杉の太くなりけり初詣 仙台 三宅 温子
【評】樹齢何百年という神杉が初詣を祝福する
母の忌の添ひし父の忌古暦 神戸 平尾 孝子
点滴を押してすすめば冬の草 東京 山口 岳人
何事も感謝感謝の初明り 豊橋 赤沢 進
春雨にふくらみきたる手紙かな 東京 草間をり絵
落葉掃逆らふひとつ手で拾ふ 和泉 中里 君子
目つむればいのちの真赤冬日向 西東京 一色 菊江
紅葉散る解体続く司祭館 秋田 畑山真理子
聖堂より見上げる空に柿ひとつ さいたま 古澤 孝之
燃ゆる富士炎雲へと冬夕焼 府中 荒井 美邦
おさがりの母の帽子や冬薔薇 秦野 小泉早由美
着ぶくれて最後のひと日想像し 大分 本田 純江
初夢はノートの真中太字ペン 東京 岡野 真弓
寒風に友を見送り十字切る 名古屋 成田 友子
冬うらら八十路の道をペダル漕ぐ 福岡 三谷 淑美
神代より涌きたる井戸や寒の水 選者吟
(作品の応募方法は俳句応募フォームをご覧ください)
