『日々の黙想 今ここに気付く 150の祈りと瞑想』 科学と聖書に根差した実践の書

 瞑想(めいそう)をすると「心が落ち着き、リラックスできる」というのは誤解だと本書は述べる。瞑想中に「心が集中し、頭もすっきりする体験」ができないなら、「瞑想が下手」というのも誤解だという。
 臨床心理学の専門家でありクリスチャンである著者アイリーン・クレイゲル氏は、瞑想の方法の一つ「マインドフルネス」を長く実践してきた。
 マインドフルネスとは、さまよう心や、落ち着かない体、そうした心身の動きを「観察する機会」のこと。自身の心身の動きについて、その良し悪しを判断したり、無理やりそれと違うものに変えようとしたりしないで、「ただ観察する」ことを指す。瞑想には失敗がない、という言い方もできる。
 このマインドフルネスの実践を重ねていく体験は、「神、他者、自分自身とつながる」ことができるように自身が成長し、鬱(うつ)から癒える「自己変革の体験」だったと著者は証言する。
 著者は現在、米国ミシガン州のカルバン大学というキリスト教の大学でカウンセラーとして若者を助ける傍ら、教会などでマインドフルネスの実践を指導している。
 本書はこうした著者の体験と科学的知見を基に、みことばを味わい、祈る(神と出会う)機会を提供する。
 収録された150の黙想は全て、みことばと、そのみことばに関する文章を読むことを通して、3分程度でできるマインドフルネスの「実践」へと導くもの。本書には、その実践の際に参照する「黙想ガイド」として、「移動瞑想」「食べる瞑想」など10種類の黙想や祈りの方法が紹介されている。最初から順番に黙想を進めてもいいし、気に入った黙想だけを繰り返してもいい。
 「黙想1」では、詩編(73・24~26)を読み、「身も心も朽ち」たと感じた日について思い巡らす。実践として、自身が〝回復の必要〟を感じた時に「すること」をリスト化するようアドバイスしている。
 「黙想93」で取り上げたみことばは、「主イエスの恵みがあなたがたすべての者と共にあるように」(ヨハネの黙示録22・21)という「神の民」への祝福だ。
 私たち神の民は〝問題児〟ばかりだが、自分の失敗を認め、恵みを求めて神に立ち返り続ける。これに対し、神は「驚くべき方法」で、他の人々を神のもとに導く役割を私たちに与える。
 聖書の最後に記された前掲の祝福は、「まさにあなたのためのもの」。何かを「やらかした」時は、この祝福を思い起こすようにと著者は言う。そして本書の黙想ガイドにある「ストレッチ・ヨガ瞑想」に倣って軽く体を動かし、「神の恵みを受け取る」実践へと読者を導く。
 本書は「初めに」で、瞑想の意味やキリスト教における瞑想の歴史、本書の使い方などを紹介。巻末の「Q&A」では、瞑想中に不安を感じた場合の対処法や、世間に幾つもあるマインドフルネスのガイド(手引き)の中から、適切なものを選ぶための基準やアドバイスも示している。
 マインドフルネス瞑想と共通する方法を用いる「キリスト教的ヴィパッサナー瞑想」を指導してきたイエズス会の柳田敏洋神父は、こう話す。
 「マインドフルネスは、『今ここをあるがままに気付く』瞑想ですが、キリスト教ととても相性がよく、イエスの教えたアガペの愛で『今ここ』に気付くことで無条件の愛を心に育む優れた方法です。みことばと瞑想を結び付けた本書を強くお薦めします」
 本体のサイズは、新書版を一回り大きくした程度(縦175mm×横110mm)。合成皮革のしっかりとした表紙をめくると、1ページ目に「この本をあなたに贈ります。」とあり、贈る相手の名や、年月日を記入する欄もある。大切な人へのプレゼントにもよさそうだ。
 360ページ。価格は2640円(税込)、日本聖書協会発行。

本体(左)は合成皮革装で、筒状のスリーブケース(右)入り
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