カトリックの価値観にかなう映画作品に年1度贈られる「日本カトリック映画賞」に、今年は安田淳一監督の『侍タイムスリッパー』が選ばれた(選考発表1月13日)。
この映画は、幕末に生きる会津藩士が現代にタイムスリップするという設定の物語。一本気な主人公が、突然放り込まれた環境に戸惑いながらも次第に周囲の人々とつながり、時代劇の「斬られ役」という、言わば「脇役」の職務の中に自分の生きる道を見つけ出していく姿を描いた。幅広い年代の観客が楽しめる、笑いあり、涙ありの娯楽作品となっている。
昨年8月、たった一つの映画館が上映を始めたところ評判を呼び、全国の映画館で拡大上映されるようになった。
監督は京都の実家で米農家を継ぎながら映画の世界に関わっており、この作品は私財をつぎ込んだ自主製作。脚本のほか、撮影や録音など一人11役をこなし、低予算とわずかなスタッフで完成させた。
日本カトリック映画賞を主催するのはシグニスジャパン(カトリックメディア協議会/会長=土屋至)。顧問司祭の晴佐久(はれさく)昌英神父(東京教区)はこの作品を「笑って泣いて心を震わせられる、真剣勝負の映画」と評価する。授賞理由として、「主人公が私利私欲を捨て、命がけで義を守ろうとする姿は武士道そのものであり、友のために命を捨てるキリストの道さえ思わせて、心が洗われる」とも述べている。
日本カトリック映画賞の授賞式は、7月12日午後2時から東京・千代田区の日本教育会館一ツ橋ホールで行われる。当日は授賞式と映画の上映に続き、安田監督と晴佐久神父の対談も行われる予定。詳細はシグニスジャパンのウェブサイト(https://signis-japan.org/)参照。
なおこの映画は3月14日、今年度の日本アカデミー賞で、作品賞など7部門で優秀賞を獲得した。
