短歌・俳句 1月

◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ

テナント募集の貼り紙多き街道にせめてと並ぶるサルビアの赤    長崎 荒井 慎一

【評】上句の具体がかつて賑わった街道の今の状況をつまびらかにしている。明るさを取り戻そうと植えた赤いサルビア。小さな炎のような花。古い街並みを照らすにふさわしい。

ふと気づく筆に「ロシアのリス」とありロシアの筆にて平和描かむ  福岡 三谷 淑美
水俣病の話題に眠る学生を恨まれたとて起こす わたしは      青梅 重吉 知美
寺町のハロウィン楽し教会で祝福される七五三もまた        川崎 印出美由紀
世界から軍事パレードなくなれとニュース見るたび心が沈む     東京 藤木倭文枝
急ぐべし短き香ぞ消えゆけば言ひ尽くさずに祈り終わらん    長崎 はっとりのりこ
心には神の徴をいただくもジキルとハイドが棲みてをりたり     横浜 吉村  一
エアコンのフィルターはずして掃除して「まだイケるな」と脚立をしまう
                                東京 千葉 明子
草とりに励む庭に朝の蜘蛛ひとり暮らしも九年目に入る       秦野 遠藤 伸枝
わが召しは囲いの中の修道女いかに果たさん宣教の使命      上越 聖クララ会員

                (作品の応募方法は短歌応募フォームをご覧ください)

◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎

◎十字切る指先つたふ秋思かな    神戸 平尾 孝子
【評】十字を切る指先に着目した細やかさが秀逸
◎香水の少し残れる告解室      東京 新井 志音
【評】告解をした人をいろいろ想像でき余韻がある
鉦叩夕餉の支度急かすかに      和泉 中里 君子
長き夜の話し上手と聞き上手     東京 草間をり絵
静けさに鐘の音響くクリスマス    長崎 一ノ瀬正明
神紡ぐ燃ゆる緞帳秋夕焼       秦野 小泉早由美
通学路声も弾ける秋の空       福岡 三谷 淑美
わが影の日毎伸びゆく朝の秋     仙台 三宅 温子
在りし日の父母の笑顔や曼珠沙華   松山 丹下はつみ
海峡の大橋せめぐ冬の波       神戸 屋代 弘忠
廃屋の庭に一輪芙蓉かな      名古屋 成田 友子
夫の繰るロザリオ褪せて秋の蝶   西東京 一色 菊江
水澄むや修道院の友は今       豊橋 赤澤  進
野菊晴古の道ぶらぶらと       豊中 成瀬きよみ
風吹くや大波小波稲穂波       府中 荒井 美邦
秋高し銀ねずの穂の風にゆれ     神戸 髙橋たづ子
ミサの朝金木犀に見送られ      日野 広山 弘子
爆音の小春日和に吸ひ込まれ          選者吟

  (作品の応募方法は俳句応募フォームをご覧ください)

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