教皇「世界平和の日」メッセージ 軍事費の増大で「不安定な世界」に

【バチカン12月18日CNS】世界と各国内の政治を支配する対決的な姿勢が「日々、劇的で予測不可能になりつつある不安定な世界情勢をもたらしている」と教皇レオ14世は、「世界平和の日」メッセージで警鐘を鳴らしている。
 「他国からの危険を口実にして、軍事費の増大が繰り返し要求され、この要求に従う決定が多くの国でなされているのは、偶然ではありません」と、2026年1月1日の「世界平和の日」に当たってのメッセージは指摘する。
 それでも、平和を守り、育まなければならないと教皇レオは強調する。「嵐に脅かされた小さな炎のように内外で反対を受けても、平和を保ってください」
 バチカンが12月18日、公表した教皇メッセージは、各国首脳に配布される。
 教皇メッセージのテーマは、「あなたがたに平和があるように―『武器のない平和、武器を取り除く平和』」。教皇レオが5月8日、選出された夜に、バチカンのサンピエトロ広場に集まった人々に向けた最初のあいさつの言葉から始まる。

 宗教の利用を退け、祈りと対話を
 
 教皇レオ14世はメッセージで、自身と全ての宗教指導者の義務は、「思考や言葉さえも武器に変えようとする傾向の増大」への反対を教え諭し、暴力の正当化と誇張されたナショナリズムに宗教を利用する姿勢を非難することにあると説いている。
 「残念ながら、現代では、信仰の言葉を政治闘争に持ち込み、ナショナリズムを賛美し、暴力と武力闘争を宗教的に正当化することが、ますます普通に見られるようになっています」
 「信仰者は、神の聖なる名を覆い隠すこのような形の冒瀆(ぼうとく)に、何よりも生活の証しによって、積極的に反駁(はんばく)しなければなりません」と教皇レオは呼びかける。
 そのために必要なのは、祈りと霊性と諸教派や諸宗教の間の対話であり、「平和への道として、また諸伝統と諸文化の出会いのための言語として育むこと」が求められる、と教皇は説く。

10月28日、ローマ市内コロッセオの近くで、世界の諸宗教指導者との平和の祈りの集いに参加した教皇レオ14世。「世界平和の日」メッセージで、暴力の正当化に宗教を利用する姿勢を非難するよう呼びかけている (CNS photo/Lola Gomez)

 「心と思いと生活から武器を取り除く」
 
 教皇レオは強調する。平和を広めるための最初の一歩は、平和は可能であり、全ての人が平和を願っていることを信じることから始まる。
 「平和を遠い理想と考えるとき、平和が否定され、平和を実現するために戦争を行っても、つまずきを覚えなくなります」と教皇は警告する。
 「平和を現実に経験せず、それを守ることも育むこともなければ、家庭生活と公共生活の中に攻撃性が広まります」と教皇は続ける。そうなってしまえば、「戦争と、攻撃への対抗、暴力への対応とに対する十分な準備を行わないことは、過失とさえ見なされるようになります」。
 それが既に起こっていることを統計が示していると教皇は指摘する。
 「2024年の間に世界の軍事費は前年比で2・4%増加し、過去10年間の連続的な傾向を維持しながら、2兆7180億ドル、すなわち世界の国内総生産(GDP)の2・5%に達しています」と教皇は、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所による統計値を引用する。
 教皇レオはさらに、教育やメディアの現場で起こっている転換を嘆いている。第2次世界大戦以後の平和実現と外交努力の成果の強調や先の戦争による犠牲者の多さを恐怖と共に思い起こすことよりも、「学校や大学、さらにメディアにおいて、脅威の認識を広め、防衛と安全保障に武力のみで対応する思想を伝えるためのコミュニケーションキャンペーンや教育プログラムが推進されています」。
 そうした転換は、兵器開発技術の進歩によって、とりわけ憂慮すべきものになっている。特に開発が進んでいるのは、人工知能(AI)で制御できるドローン(無人機)やロボット、自律型殺傷兵器システムだ。
 「人間の生死を機械に『委任』する傾向の増大によって、政治・軍事指導者の責任放棄のプロセスさえも出現しつつあります」と教皇は懸念を表している。
 教皇レオ14世はキリスト者と全ての善意の人に呼びかけ、力を合わせて、「武器を取り除く平和、開かれた心と福音的な謙遜から生まれる平和の実現に貢献する」よう促す。
 「いつくしみは、武器を取り除きます」と教皇は続ける。「おそらく、そのために神は幼子となりました」
 教皇レオは、聖年が終わりに近づく中で、その実りとして、「心と思いと生活から武器を取り除く」ことが受け継がれていくようにと祈っている。
「世界平和の日」教皇メッセージの邦訳全文は、カトリック中央協議会のウェブサイトで読める。

12月17日、バチカンのサンピエトロ広場で開いた一般謁見の前にパパモービレ(教皇特別車)で広場を巡り、赤ちゃんにあいさつした教皇レオ14世。「世界平和の日」メッセージで、「いつくしみは、武器を取り除きます。おそらく、そのために神は幼子となりました」と書いている (CNS photo/Lola Gomez)
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