◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ
それぞれの家にそれぞれの理由ありて口籠りたる人口調査 宮津 杉本 友子
【評】国勢調査がありました。家族構成や持ち家か、仕事に従事しているかなど答えにためらうこともあり、心情を「口籠り」がよく伝えています。「人口調査」を用いて、ルカ伝や民数記へ思いを誘います。
神さまは福音伝える術として私の声と手を使われる 豊橋 赤澤 進
天窓のプリズム映す聖堂にオルガニストの指の運びよ 長崎 はっとりのりこ
庭先に脇差しのごと立ち咲きぬ老い母守るカクトラノオよ 東京 向井美和子
聴き終へて帰るトラムの席にさへダナイローヴァの弓の音すも 東京 植竹 雄太
バタールを一本買った嬉しさに想像している巴里の街角 岡山 宮崎 清子
詩編読む集い厳し今回もレクチオ・デヴィナ極めるところ 横浜 永井 榮司
浦上に贈られて来し小鐘の写真に響くいつくしみの音よ 秦野 遠藤 伸枝
鬼灯を口に含みて鳴らした日赤い実破れべそをかいた日 福岡 三谷 淑美
人間と猫の共存父はいつも干物を焼きてほぐして与ふ 長崎 荒井 慎一
(作品の応募方法は短歌応募フォームをご覧ください)
◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎
◎空の旅青一色に秋の富士 京都 今村 聖子
【評】眼下に見る富士の青さが秋を醸している
◎高速路濃霧に赤き尾燈追ふ 町田 鈴木 暎子
【評】濃霧の時の運転の恐怖が伝わってくる
金風や嬰児に笑みの新教皇 大阪 酒井 湧水
ロザリオで祈る手と手は秋の色 名古屋 成田 友子
秋草に白き姿のマリア像 佐世保 川口 栄子
露草や心に触れて咲きし藍 神戸 内田 泰代
露の世の被爆ピアノに残る傷 神戸 涌羅 由美
こほろぎや父の遠忌の台所 仙台 木下 明
椿の実殉教の碑に幼名も 東京 山口 岳人
手拍子に孫が歩みし花野かな 秋田 畑山真理子
うたた寝の夢を辿れる夜長かな 福岡 木本 敬子
秋雨に滲む街燈瞬けり 各務原 安江 郁子
鶏頭の燃ゆる角地や屋敷町 芦屋 平田ひろみ
虫の声そこらの闇の動き出す 大牟田 岩永美智子
秋の園歩幅と速さおのづから 東京 脇谷 善之
預言者の残せし葡萄房たわわ 川崎 守田 光代
埋められぬパズルの空欄夜のちちろ 立川 中村 克久
綿虫の群れて蒼天歪めたる 選者吟
(作品の応募方法は俳句応募フォームをご覧ください)
