大阪高松教会管区が3年に1度行う司牧者研修会が6月9日から11日までの3日間、大阪市のサクラファミリア(大阪梅田教会)で開催された。14回目となる研修会には、同教会管区の4教区(名古屋、京都、大阪高松、広島)から、信徒を含め過去最多の120人を超える司牧者らが参加した。
今回の研修会は、世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会(2021~24年)で示された「ともに歩む教会」の姿を具体化していくことを目指し、「希望をもってともに宣教の旅へ」を開催テーマとして行われた。参加者は講話を聞いた後、15人ほどのグループごとにシノドスで用いられた「霊における会話」の手法で分かち合い、日本の教会の多様性に希望を見いだしていく時を共に過ごした。
たとえ先が見えなくても
1日目は、基調講演として、ローマでシノドス総会に2度参加した菊地功枢機卿(東京教区)が、同総会や今年5月に参加した教皇選挙の報告を通じ、これからの日本の教会共同体が歩むよう招かれている「ともに歩む教会」の姿、「シノドス的教会」について次のように話した。
前教皇フランシスコが今回のシノドスで目指していたのは、教会が第2バチカン公会議(1962~65年)から60年以上続けてきた「神の民の在り方」を実現することだった。決して、政治的意図を持ってイデオロギー的な教会をつくろうとしたり、多数決で物事を決める民主主義的な教会をつくったりするためではない。「聖霊がどこに私たちを導こうとしているかを見極め、それに従う教会にしたい」というのが教皇の願いだった。
5月の教皇選挙では、投票前の枢機卿総会で複数の枢機卿が、今の教会には「一致が必要」であり、「明白な教義の表明が不可欠」だと強調していた。しかし、そうした主張の背景にある教会内の分裂や、現状に即して教会の教えが示されていない状態を心配する人々の不安をさらに深めているのが、実は教会が目指す「シノドスの道」だと菊地枢機卿は指摘する。その根拠は24年10月の総会第2会期で採択された最終文書中の前教皇フランシスコ自身による付記で、そこには教会内の議論では解釈の多様性は排除されず、先の見えない状態が続くと、こう記されている。
「教義的、倫理的、司牧的議論はいずれも、教導職の介入によって決着するものではないということを強調しておこうと思います。もちろん教会には、教義と実践の一致が必要です。けれどもそれは、教義のいくつかの側面や、そこから帰結される何らかの結論の、解釈の多様性を排除するものではありません。このことは、聖霊がわたしたちを完全な真理に導くとき(ヨハネ16・13参照)まで、すなわち、わたしたちがキリストの神秘に完全に導き入れられ、キリストのまなざしですべてを見られるようになるときまで続くことでしょう」
菊地枢機卿は言う。シノドスの歩みには「先が見えない」という特徴があるが、全世界の教会は今、決められた目標に向けて進むというよりも、常に聖霊に導かれているかどうかを振り返り、識別を繰り返していくことを実践し始めた。そして、28年10月バチカンで開催される「教会会議」へと歩み出している。
基調講演を受けて「霊における会話」を行い、各グループの代表がそのまとめの発表を行った。
希望のしるしを見いだしていく
2日目は、第1講話「多国籍の信徒の司牧状況から見えてきたこと」は、京都教区で働くホセ・ゴンザレス神父(グアダルペ宣教会)と、大阪高松教区でベトナム人の宣教司牧に携わるチャン・ティ・フエ修道女(聖母奉献修道会)が担当し、外国出身信徒の存在が日本の教会の希望であることを再確認した。
第2講話では、名古屋教区の片岡義博神父(カリタスのとサポートセンターセンター長)が「能登半島地震・豪雨災害から見えてきたこと」について語り、被災者支援を通じて、自身が地域とつながりを持ってこなかったことに気づいたと分かち合った。
2回目の「霊における会話」では、参加者は「教会における女性の役割」「青年」「信仰養成」など10のテーマ別に分かち合いを行った。
分かち合いの後、日本の教会の現状に希望を見いだしていくことができるよう、カルメル修道会の中川博道神父(宇治修道院院長)が「メシアはこういう苦しみを受けて、栄光に入るはずだったのではないか。」(ルカ24・26)をテーマに話した。2025年の聖年公付の大勅書『希望は欺かない』を引き、世にある良いもの全てに注意を向け、希望のしるしを見いだしていくことの重要性を指摘。活動修道会の修道院閉鎖が相次ぐ現状は悲観されがちだが、務めを成し遂げた後は「終わっていくのが私たちの役割」とも語り、不毛な悲観主義の誘惑を警戒するよう導いた。
3日目は、前日の分かち合いのまとめが発表され、それを受けて4教区の司教団が講評を行った。
派遣ミサを主司式した前田万葉枢機卿(大阪高松教区)は説教で、当日の典礼で「聖霊」と「平和」の2語が心に残ったと語り、「私たちもただで受けたキリストの平和をただで与えていく希望の巡礼者として派遣されていきたい」と願いを分かち合った。
昨年司祭叙階された出水洋(でみずひろし)神父(京都教区)は「教会に一人で住んでいると(司牧の中で)迷うこともあるが、宣教を共に続ける仲間がいることをこの研修で再確認した」と言う。
カルメル宣教修道女会のロサ・チェリアン修道女は、同じ現実を見ていても「不安になる人もいれば、そうでない人もいる」という、一見〝不一致〟とも映る教会の〝多様性〟が心に残り、そこに希望を感じたと語った。
京都教区福音宣教企画室の高田晶子さん(京都・長岡教会)は、「信徒として司牧者の中で研修を受けるというお恵みを頂きました。『霊における会話』で、(手順で重視されている)個人での祈りの準備の時間がもう少しあるとよかったと感じたので、小教区で『霊における会話』を取り入れる際は、祈りと分かち合い、双方のプロセス(過程)を大切にできたら」と話していた。
今回の「霊における会話」による分かち合いは要約されて、シノドスと同様、文書にまとめられる予定。
