【ワルシャワ(ポーランド)6月2日OSV】彼女たちの名前は、歴史の教科書からは消えてしまったかもしれないが、教会は5月31日、公式に、永遠に彼女たちを記憶した。ポーランド北東部のブラニエボで荘厳な式典が行われ、聖カタリナおとめ殉教者修道会の15人の修道女が列福された。
1945年、ソ連軍がこの地域に侵攻し、修道女たちは殺害された。平和を希求した彼女たちは、逃げることなく、自分たちの保護下にある弱い立場にある人々のもとに留まり、混乱と暴力の中で慰めと保護を提供することを選んだ。長い間見過ごされてきた彼女たちの証しは、感謝と敬意に満ちた典礼の中で教会によってたたえられた。

時期に殉教した聖カタリナおとめ殉教者修道会の15人の修道女の列福
式が行われた際、聖遺物の箱を運ぶ修道女たち(OSV News photo/
courtesy Polish bishops' conference)
残酷さに立ち向かう勇気
シスター・クリストフォラ(クシシュトファ)・クロムファスと彼女の14人の仲間たちは、託された人々を守ろうとして、あるいは自らの尊厳を守ろうとして、凄惨(せいさん)な死を遂げた。列福申請の責任者であるルチャ・ヤウォルスカ修道女によれば、「シスターたちは皆、ソ連兵の手によって亡くなりました。彼女たちは神に誓った純潔を守ったのです。この美徳は、今日、ほとんど信じられていません」
想像を絶する暴力に直面したにもかかわらず、修道女たちは決して信仰や誓いを捨てることはなかった。 「彼女たちは信仰のために、尊厳と純潔、そして彼女たちに託された人々を守るために亡くなりました。彼女たちはキリスト教とカトリック教会に対する憎悪の犠牲者でした」とジャウォルスカ修道女はバチカン・ニュースに語った。
教皇レオ14世は、6月1日の「アレルヤの祈り」の後のことばで、「カトリックの信仰に対する憎しみと恐怖の風潮にもかかわらず、シスターたちは病人と孤児への奉仕を耐え忍んだ」と述べた。
教皇レオは呼びかける。「神の国のために惜しみなく自らをささげる世界中のすべての女子修道者を、新たな福者である殉教者の取り次ぎに委ねましょう」
分断された世界へのメッセージ
列福式のミサを司式した、列聖省長官で教皇特使のマルチェッロ・セメラーロ枢機卿は、説教の中で、新たに列福された修道女たちがメッセージを投げかけていることを強調した。
「シスター・クシシュトファ・クロムファスと彼女の14人の仲間たちは、今日、私たちに特別な教訓を与えてくれます。それは、今日の私たちの社会にまん延している憎しみと分裂の文化に直面したときの回復力です」とセメラーロ枢機卿は語った。
さらに、修道女たちの殉教は、「イデオロギー戦争という、当時欧州で迫害、死、暴力、破壊をもたらした」状況の中でささげられた「信仰の最高の証し」であると述べた。
セメラーロ枢機卿は、第2次世界大戦の終結80周年が近づくにつれ、悲劇だけでなく、そのような暗闇から立ち上がることのできる道徳的な明晰さと平和を思い起こすよう、信徒に促した。
「この日、そしてこの15人の修道女の列福が、全世界への平和への呼びかけとなりますように」
リベンジ(復讐/ふくしゅう)ではなくリメンバー(思い起こす)
「今日、この列福式において、私たちは彼らの物語を思い起こし、復讐(ふくしゅう)を求めたり、人間的正義による賠償を求めたりするのではありません。むしろ、私たちは彼女たちから最も尊いもの、すなわち、全ての人間に対するゆるし、いつくしみ、愛を受け取ろうとするのです」
このゆるしのメッセージが式典の中心にあった。新しい福者たちは、私たち一人一人に「ゆるし」と「回心」という二つの言葉を呼びかけるのだと、枢機卿は述べた。
「ゆるすこと、つまり、恨みや憎しみを抱く悲しみを自分自身から取り除くよう、私たちを促しているのです。私たちの共同体、日常生活において、平和、友愛、他者の自由の尊重、人間関係の調和を選択するように」
単なる歴史的英雄ではない
教皇特使は、修道女たちの人生は、信仰と道徳的信念がもたらすものに関する現代の疑問に向かって力強く訴えていると述べた。キリスト教的価値観がしばしば非難を浴びる世界において、彼女たちの勇気は挑戦であるとセメラーロ枢機卿は述べた。
「今日、私たちはこの新しい福者たちのような信頼できる証人を必要としています」とセメラーロ枢機卿は述べた。「もろくなりがちな信仰を強め、私たちのキリスト教共同体に希望の炎を再び灯し、神の限りない愛へと私たちの心の地平線を広げるために」
第2次世界大戦末期は、ポーランドの聖カタリナおとめ殉教者修道会にとって悲惨な時期だった。赤軍の猛烈な攻撃と、間もなく始まったソ連のイデオロギーによる欧州のこの地域の占領に抵抗する中で、105人の修道女と1人の修道士が殺害された。
聖カタリナおとめ殉教者修道会のアンジェラ・クルピンスカ修道女は、ポーランドのカトリックニュースにこう語った。「避難することもできず、シスターたちはほとんど逃げることを望まず、市民や子どもたち、病者たちと一緒にいることを選んだのです。終戦した時が、私たちの修道会の450年の歴史の中で最も困難な瞬間でした。それまで積み上げてきた全体が粉々に砕け散ってしまっていたからです」
修道女たちの殉教は「愛の大きさ」によって示されたと語った。
「彼女たちは、レイプや殴打といったひどい拷問を受けました。それでも彼女たちは愛することをやめず、信じることをやめなかった。私は彼女たちを宗教的な観点からではなく、普遍的な観点から見ています。悪を受け継がせなかったのです。混沌とした、意味も希望もない恐ろしい世界で、彼女たちは憎しみを止め、それ以上持ち越しませんでした。最後まで神を信頼し、皆をゆるしたのです」
