ミャンマー国軍の犯行か カトリック大聖堂が全焼

【バモー(ミャンマー北東部カチン州)3月20日OSV】内戦が続くミャンマー北東部カチン州で、国軍がカトリック教会の聖パトリック大聖堂を全焼させたとみられている。聖パトリックの記念日の前日夜に起こった事件とされる。
 ミャンマー国家統治評議会の兵士らが3月16日、バモー教区のカテドラルに火を放ったとみられる、と翌17日、地元関係者の話として「ラジオ・フリー・アジア」(RFA)が報じた。
 今回の事件は国軍による教会や関連の建物に対する攻撃の一環だと、政府の報復を恐れて匿名でRFAに話した関係者は指摘する。
 「残っていたのは教会だけだったのですが、昨日になって信者たちが行ってみると教会も全焼していたのです」と関係者は17日、RFAに語り、他の建物は既に全焼していたと付け加えた。
 聖パトリック大聖堂が破壊されたことで、「嘆きと絶望だけがあります」と地元カトリック共同体の司祭は、教皇庁福音宣教省が運営するFIDES(フィデス)に語った。この司祭も安全上の懸念から名前を明かさなかった。
 「多くの信者たちが泣き悲しみ、絶望しているのを目にしました。私たちは主の元に逃れるしかありません。この四旬節に、人々は森で集まって祈っています。信者たちは山の中で十字架の道行(みちゆき)と行列を実践して、信仰のうちにキリストの苦しみにあずかっています」と司祭は説明する。
 司祭館のある3階建てで教区事務所と高校も入っていた建物は2月26日に焼き打ちに遭っていたとFIDESは報じている。
 「時として使われる口実は、(礼拝施設が)反政府勢力の隠れがになっているというものです。他の場合には、建物が兵士らに占拠され、その後で使われなくなると、全くの軽蔑心から破壊され、焼き払われることになります」と司祭はFIDESに語った。
 「国軍の兵士たちはしばしば教育も受けず教養もない若年者で、徴兵されて司令官に操られているだけなのです。残酷な行為に走りますが、自分たちの行動の重大さを理解していません」と司祭は付け加えた。
 国軍は2月6日にミャンマー北西部チン州にある「み心教会」を破壊した空爆も行っている。同教会は、1月28日に教皇フランシスコが創立したばかりのミンダット教区のカテドラルになるはずだった。

 クーデター以来の避難者は240万人

 今回カテドラルが全焼したバモー教区は2006年創立で、レイモンド・スムルット・ガム司教が司牧する。東に中国と国境を接し、山間部が管轄区域。
 内戦が始まる前の同地域の総人口は約40万7000人で、各少数民族に属するカトリック信者は2万7000人以上いたとFIDESは伝えている。
 RFAの報道によると、バモー教区内の家屋や教会、学校などに対する空爆や砲撃、ドローン(無人機)攻撃による被害の全容は分かっていないという。
 2021年2月のクーデターで文民政権を倒した国軍は、新たに誕生した「人民防衛軍」などの反政府勢力と北東部カチン州や西部ラカイン州、東部のカレンニ州とカレン州の複数の前線で戦闘状態にある。
 国軍が戦闘の状況について詳細を明らかにしていない北東部カチン州の総人口は170万人で、カトリック信者は11万6000人いる。
 3月4日の時点で、国軍によるクーデターで家を追われた3万8200人以上を含む12万4500人以上がカチン州の避難民キャンプで暮らしている。
 ミャンマー全土では270万人が家を追われていて、そのうち240万人は2012年のクーデター後に避難した、と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は明らかにしている。

ミャンマー東部カヤ州のドー・ヌガイ・ク村にある聖マタイ教会。国軍によって破壊されたとされている。
2022年6月27日撮影(OSV News photo/courtesy Amnesty International)
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