【パリ3月12日OSV】フランス司教団は「宗教遺産全国調査」の結果を公表した後、歴史的教会の修復を通して老朽化した貴重な建造物を保全するだけでなく、人々を信仰に引き寄せることも目指している。
フランス第2の都市マルセイユのような歴史的都会からノルマンディー地方の小村まで、しばしば悲惨な状態にある地元のカトリック遺産が救済されることを人々は喜んでいる。
2月2日には、マルセイユのノートルダム・ド・ラ・ガルド大聖堂の上にそびえる聖母マリア像の修復工事が始まった。高さが約10メートルあり金箔(きんぱく)が貼られたマリア像は地中海を見下ろし、毎年200万人以上の観光客を引きつけている。2023年9月には教皇フランシスコが同大聖堂を訪れ、その地理的な重要性が強調された。
1905年に制定されたフランスの教会と国家を分離する法律によって、教会建造物は国家の財産とされ、教会はそれを受託する立場になっている。ただ、マルセイユの大聖堂は例外的に教区が所有している。
マルセイユ教区大司教のジャン=マルク・アベリーヌ枢機卿は2024年に聖母像修復の資金集めのキャンペーンを立ち上げた。聖母像は耐久性維持のために約30年ごとに修復しなければならない。相当な献金が集まり、必要な総額がそろう前に工事を始めることができた。
教会建造物は博物館ではない
「宗教遺産全国調査」を指揮したのは、カルカソンヌ・ナルボンヌ教区のアラン・プラネ名誉司教。2023年9月に発表され、24年12月に終わった同司教団の調査プロジェクトは、行政当局と協力して貴重な遺産を保全することを目指すもので、大規模な全国調査の結果は今年1月に公表された。
「フランスで(人口の)都市集中が進んでいることが際立つ結果になりました」とプラネ司教は話す。
「人々は過去にも増して都市に多く住むようになっています。新しい教会が都市部に建つ一方で、過疎化が進む村々では多くの片田舎の教会が閉鎖されているのです。自治体の首長たちは、地元で唯一の歴史的建造物となった教会への愛着と自治体の予算にかかる負担の間で板挟みになっています」と同司教は続ける。
司教団にとって重要なのは、修復後の教会の無料公開が続くことだ。昨年12月に修復を終えて再公開されたパリのノートルダム大聖堂について、フランスの文化相は入場料の導入を示唆したが、パリ教区は即座にこの提案を拒否した。
「教会は信者の共同体が集まる生きた場所です」とプラネ司教は強調する。「私たちの教会を『フランス最大の博物館』に変えることなど論外です。それは私たちの共同体で起こっていることに沿うものではないからです」
宗教遺産への関心から信仰の旅路へ
司教団の調査は、建物に限ったものではなく、行列や信心会、伝統的宗教行事などの宗教遺産にも注目していた。近年、こうしたことへの関心が高まっているからだ。
巡礼についても同様で、1980年代にはスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラへのフランスからの経路をたどる人は年に数百人に過ぎなかったが、現在では非信者とカトリック信者の双方が巡礼に参加していて、フランスのサンジャンピエドポールという町からだけで年間3万2000人以上が徒歩で出発しているという。他の経路も含めて全行程を徒歩で踏破したフランス人は1万人に上る。
フランス司教団は、こうした宗教遺産への関心の高まりは人生で信仰に向かおうかと考えている人の助けにもなるとみている。2024年にはフランスで、成人と青年を合わせて記録的な1万2000人以上が復活祭に受洗した。
受洗者の多くは、フランスの宗教遺産が信仰の旅路に向かわせる大きなきっかけになったと証言している。
