カトリック学校に進化を求める 教皇、教育に関する使徒的書簡

【バチカン10月28日CNS】過去数世紀で変化を遂げてきたカトリック学校は、さらに進化を続けて、科学技術だけでなく人生の意味と目的についての混乱という難題にも直面する若者たちを助けていかなければならない、と教皇レオ14世は呼びかける。
 「私は全ての教育機関に向けて呼びかけます。これからの若い世代の心に語りかける新しい時代を開いてください。知識と意味、能力と責任、信仰といのちを改めて一つに結び付けるのです」と教皇は、自身の新しい使徒的書簡で促している。
 第2バチカン公会議文書『キリスト教的教育に関する宣言』の発表60年を記念する使徒的書簡「新しい希望の地図を描く」は10月28日、イタリア語版だけで公表された。
 教皇レオ14世は同使徒的書簡の中で、正式に聖ジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿を「聖トマス・アクィナスと並ぶ教会の教育の使命の共同の保護者と宣言」した。
 教皇は11月1日、聖年の「教育界の祝祭」の中で、公式に聖ニューマンに「教会博士」の称号を授与する。同聖人の「神学の刷新とキリスト教教理の発展についての理解」に貢献したことが認められる。聖ニューマンは1801年2月21日、英国ロンドンに生まれ、英国国教会(聖公会)の司祭に叙階されていたが、45年にカトリック教会に転籍、79年に教皇レオ13世によって枢機卿に叙任され、90年に死去した。

 アルゴリズムより人間を大切に
 
 教皇レオ14世は使徒的書簡で指摘する。デジタル革命や人工知能(AI)の到来に直面していても、カトリック学校や大学は「驚くべき耐久力」を示している。
 「教育界がキリストのことばに導かれていれば、後退することはなく、再び前進していきます。壁を築くことはなく、橋を架けます。創造性をもって反応し、知識と意味の伝達への新しい可能性を開きます」と教皇は強調する。
 教皇レオはカトリック教育者や教育機関に向けて、「三つの優先事項」に力を注ぐよう求めている。
 「一つ目は内面の生活に関わることです。若者たちは深いものを求めます。そのために必要なのは、静かな場と識別、自分たちの良心、そして神との対話です」
 「二つ目は人間らしいデジタル文化についてです。私たちは科学技術とAIの賢明な活用を教育しなければいけません。アルゴリズム(課題を解決するための処理方法)よりも人を大切にして、技術的、情緒的、社会的、霊的、そして環境的な形の知性を調和させるのです」
 「三つ目は武装せず武装を解く平和に関わります。非暴力的な言葉、和解、壁を築くのではなく橋を架けることを教えていきましょう。『平和を実現する人は、幸いである』(マタイ5・9)が、学びの方法と内容になりますように」

 「心が心に語りかけるのです」
 
 教皇はそれと同時に、こう指摘する。カトリック学校が科学技術を無視したり、避けたりすることはできないが、デジタルプラットフォームやデータ保護、全ての学生生徒のための公正なアクセスについて識別しなければならない。
 「どんな場合にも、アルゴリズムが教育を真に人間らしくするものに取って代わることがあってはいけないのです。それは、詩や風刺、愛や芸術、想像力、発見の喜び、そして成長の機会としての過ちからの学習にまで及びます」と教皇の使徒的書簡は説明する。
 教皇レオ14世は強調する。「教育を受けることが特権になってしまっているところでは、教会は門戸を大きく開け放って、新しい方法を考え出さなくてはなりません。『貧しい人を失うこと』は、学校そのものの意味を失うことだからです」
 「教育は希望の行いです」
 「カトリック学校と大学は、質問が黙殺され、疑いが禁じられるのではなく、寄り添われる場でなくてはいけません」と教皇は続ける。「心が心に語りかけるのです」と、教皇は聖ニューマンの枢機卿としてのモットーを引用した。

10月27日、バチカンの聖ペトロ大聖堂での教皇庁立大学の学生とのミサ前に、自身の使徒的書簡「新しい希望の地図を描く」に署名した教皇レオ14世。翌28日に発表60周年を迎えた第2バチカン公会議文書『キリスト教的教育に関する宣言』を記念する文書で、横に立つ教皇庁文化教育省長官のジョゼ・トレンティノ・デ・メンドンサ枢機卿が署名を見守った (CNS photo/Lola Gomez)
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