信教の自由への攻撃が急増 教皇庁国務省長官の枢機卿

【ローマ10月21日CNS】信教の自由は基本的で必要不可欠な人権であるだけでなく、「真理や神と隣人との間のより深い交わりへの道筋でもある」と教皇庁国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿は強調している。
 それにもかかわらず、信教の自由は世界196カ国のうち62カ国で厳しく制限されており、およそ54億人が影響を受けている。「言い換えれば、世界人口のほぼ3分の2が、深刻な信教の自由の侵害が起こっている国々で暮らしているのです」とパロリン枢機卿は指摘する。
 パロリン枢機卿が10月21日の発言で引用したのは、教皇庁関連の援助事業「エイド・トゥ・ザ・チャーチ・イン・ニード」(ACN)による「2025年信教の自由報告書」の数値だった。同報告書は当日、ローマのアウグスティニアヌム教父研究所で発表され、同枢機卿はそれに基づいて話した。
 ACNの25年の歴史の中で最大規模の1248ページに及んだ今回の報告書による事実は「信教の自由の侵害が年々増加していることを示しています」とパロリン枢機卿は語った。

 41億人が「組織的な侵害」に遭う
 
 2023年1月から24年12月31日までの期間についての報告書で明らかになったのは、「暴力や身柄の拘束、抑圧を含む重大で組織的な侵害があり、中国やインド、ナイジェリア、北朝鮮といった国々で41億人以上が被害に遭っている」ことだった。
 ACNは他に、エジプトやエチオピア、メキシコ、トルコ、ベトナムなど38カ国を列挙し、「宗教による差別」が日常的にあると指摘している。ACNによると、そうした国々では、「宗教集団が礼拝や表現、法的平等性について組織的な制限を受けている。暴力的な抑圧ではないにしても、しばしば差別によって疎外や法的不平等も発生している」という。
 報告書によると、メキシコやハイチでは、「組織犯罪が迫害または差別の主要な原動力になっていて」、司祭や教会職員が誘拐または殺害され、礼拝施設や聖品が「全くとがめられることなく」汚されているが、政府は薬物密売組織や犯罪集団の取り締まりができていない。

 宗教的迫害が強制移住や退去を加速
 
 報告書の発表会議で話したパロリン枢機卿は、カトリック教会がいかなる宗教であっても全ての人の信教の自由を支持していることを強調した。12月に発表から60年を迎える第2バチカン公会議文書『信教の自由に関する宣言』にも明記されている。
 同公会議が信教の自由を支持したことは、「『人々が神に仕えながら、キリストにおいて救われ至福を味わうことのできる道を、神自身が人類に伝えた』(同『宣言』1)という公会議の確信に基づく行動への促しです」と同枢機卿は強調する。
 ACNの報告書はさらに、こう指摘している。「宗教的な迫害がますます強制的な移住や退去を加速させていて」、その被害者たちは世界中で「暴力や差別、国家による保護の欠如」によって避難を余儀なくされている。
 ACNは、2018年のバチカンと中国共産党政権の間の「暫定合意」を中国のキリスト者にとっての「待遇改善のしるし」と評価はしているが、その改善は政府公認のキリスト教組織に所属する信者に限られていると指摘する。
 「中国天主教愛国会」に加わらないカトリック司祭や司教たちは引き続き、逮捕または拘留されていて、中国の多くの地域では、18歳未満の少年は教会に行くことや教会関連の行事に参加することを禁じられている、とACNは報告している。

10月21日、ローマのアウグスティニアヌム教父研究所で開かれたACN(エイド・トゥ・ザ・チャーチ・イン・ニード)の「2025年信教の自由報告書」発表会議で発言する教皇庁国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿 (CNS photo/Lola Gomez)
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