【エルサレム9月30日OSV】聖地のキリスト教指導者は、国連総会でイスラエルのベニヤミン・ネタニヤフ首相が行った演説の内容を非難し、パレスチナでキリスト教徒が減少した原因はイスラエルによる占領にあると強調した。
「キリスト教徒や他の多くの人々がベツレヘムを去っている原因はイスラエルによる占領と封鎖や通行許可、排他的な居住権などの政策にあり、パレスチナ当局の施策によるものではない」と9月27日、聖地で超教派の「正義のためのエルサレムの声」を構成する数十人のキリスト教指導者による共同声明は訴えている。
共同声明の署名者には、1987年から2008年までラテン典礼カトリック教会エルサレム総大司教を務めたミシェル・サバ名誉総大司教やギリシャ正教会エルサレム総主教座のテオドシオス・セバスツィア教区大主教、福音ルーテル教会聖地教区のムニブ・ユーナン名誉監督らがいた。
パレスチナ・ガザで、イスラエル軍がなおも侵攻を続けていることで緊張が高まり、国連委員会や専門家たちが侵攻継続をジェノサイド(集団殺害)と認定している中で26日、国連総会でネタニヤフ首相が演説を始める前に多くの外交官たちが議場から退出した。

「ナクバ」で減ったキリスト教徒
ネタニヤフ首相は演説で、パレスチナ当局とガザを実効支配するイスラム組織ハマスを同一視し、ヨルダン川西岸のキリスト教徒はパレスチナ当局の統治下では「満足な生活は送れない」と批判した。
「ベツレヘムがイスラエルの支配下にあったころには、住民の80%がキリスト教徒だったが、パレスチナ当局が統治するようになってから、20%以下にまで減った」と同首相は主張した。
これに対して、聖地の教会指導者らは共同声明で、ネタニヤフ首相は「キリスト教徒のパレスチナ人を代表して演説したわけではなく、真実をねじ曲げることは許されない」と非難する。
「ベツレヘムは1948年まではキリスト教徒が大多数を占める都市で」、同年に起こった「ナクバ」(大惨事)の前までは「住民の80%以上はキリスト教徒だった」と共同声明は強調する。「ナクバ」は、イスラエル建国によって約75万人のパレスチナ人が難民となったことを指すアラビア語の言葉。
さらに超教派のキリスト教指導者たちは、イスラエル軍が続けるガザ侵攻によって、ベツレヘムへの「旅行者や巡礼者の来訪はほぼ完全になくなり」、数百人の住民がヨルダン川西岸の「イスラエル軍による占領と暴力行為」のために現地を去っていると指摘する。
「私たちは訴えます。ベツレヘムとパレスチナ全域のキリスト教徒とムスリム(イスラム教徒)は一つの民として、占領下の苦難を共に耐え忍びつつ、共生を続けていきます。真実は変わりません。パレスチナ人はキリスト教徒もムスリムも同じく、祖国の地で平等と正義と平和を求めていきます」と教会指導者たちの共同声明は宣言している。
