ガザの教会共同体は戦争で疲弊 食料不足も、祈りで希望つなぐ

【ガザ(パレスチナ)7月14日OSV/バチカンメディア】パレスチナ・ガザ北部の聖家族小教区主任司祭のガブリエル・ロマネリ神父は、信者たちは戦争に疲れ切り、深刻な食料不足にも苦しんでいるとバチカン放送に語った。ガザではイスラエル軍の空爆によって7月13日だけで少なくとも12人が死亡。中部の給水所に集まっていてミサイル攻撃を受けた。そのうち6人は子どもだった。
 イスラエル軍は戦闘員を標的としていたが技術的な誤りのために弾薬が「標的から数十キロ離れた」地点に着弾したと説明した、とAP通信は報じている。
 聖家族小教区のロマネリ神父は、ガザを忘れずに祈り続けてほしいと願っている。祈りは終わることのない希望の源だと言う。
 同神父はバチカン放送に、生活必需品の価格が信じがたい高値になっている上に人道支援がイスラエルにより全面停止されていることで入手もほとんど不可能になっていると話した。
 小麦粉は1ポンド(約450グラム)11ドル(約1620円)、トマトが13ドル(約1920円)、タマネギ1個が14ドル(約2070円)から17ドル(約2500円)もするのだという。砂糖は1ポンド50ドル(約7380円)。
 こうした食料不足で人々は何を食べているのか。ロマネリ神父は答える。停戦期間中に備蓄していた支援物資で「数カ月は何とかしのぎ、小教区近辺のムスリム(イスラム教徒)の家庭を援助することもできていました。ところが3月3日にイスラエルが人道支援を全面停止すると、何も届かなくなったのです。それ以来、自分たちの分を確保するのが精いっぱいで、配分にも気を付けています」。
 聖家族小教区の近所の家屋は、ほとんどが空き家になってしまった、とロマネリ神父は言う。
 「私たちの周りには死と破壊があるだけです。昼も夜も、爆弾が落ちてくる音に耐え、時には教会からほんの数百メートルに着弾しているのです。現実のこととは思えませんが、この21カ月間で、こうした恐ろしい爆発音は私たちの日常の一部になってしまっています」と同神父は続ける。

 小さくても全教会の一部 祈りと支援の継続を願う
 

 聖家族小教区の共同体は、今は500人ほどの規模になったとロマネリ神父。
 「小教区の敷地内の至るところにテントを張っている状態です。(2023年の)10月7日以前は、ガザには1017人のキリスト教徒がいました。そのうち、およそ300人が南部ラファのエジプトとの検問所がまだ開いていた時に脱出しました。そして54人が亡くなりました」と同神父は説明する。死者の中には、23年10月のギリシャ正教会の聖ポルフィリウス教会への空爆で死亡した人もいるという。
 聖家族小教区でもイスラエル軍の攻撃で3人が死亡し、「神の愛の宣教者会」の修道院も攻撃の標的にされた。
 「その他の人たちは戦争関連により亡くなっています。心臓病や糖尿病などの疾患があっても、もう必要な医薬品の投与ができないのです。それでも、マザー・テレサの『神の愛の宣教者会』のシスターたちが、障害のある人や病気の子どもたち50人のケアをしています」とロマネリ神父は付け加えた。
 同神父は、深い疲労感と不安が共同体内に漂っていることを認める。「私たちはほぼ完全に、この地域に取り残されているように感じています。私たちを一つにまとめて、希望を抱かせてくれるのは祈りだけなのです」。そして「私たちが絶望に陥るのを防いでくれます」。
 同神父はガザの現状を世界に伝えてくれるバチカンメディアのウェブサイトに感謝を表しつつ、教皇フランシスコがまだ健康だった時にほぼ毎晩、電話をかけてくれたことを感謝するとともに懐かしく思い出すとも語った。
 「教皇フランシスコからの連夜の電話は、とてつもない力の源になっていました」
 「私たちは小さくても、普遍教会というとても大きな存在の一部だと分かり、全世界の数十億人のキリスト教徒が、私たちの小さく、苦しんでいる共同体のために祈ってくれていると知ることは、私たちにとても大きな回復力を与えています。私たちと皆さんの祈りがなければ、ここまで持ちこたえることはできなかったことでしょう。食料や医薬品や燃料も、祈りと同じように私たちには欠かせません。私たちは皆さんを頼りにしています」とロマネリ神父は支援の継続を願っている。

4月21日、教皇フランシスコ逝去の報を受けて、ミサをささげたパレスチナ・ガザの聖家族小教区で主任司祭を務めるガブリエル・ロマネリ神父。信者たちは戦争によって疲弊し、深刻な食料不足にも苦しんでいる、と同神父は話す(OSV News photo/Dawoud Abu Alkas, Reuters)



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