カトリック学校第37回校長・理事長・総長管区長・司教の集い  美術と対話から希望を見いだす

 日本カトリック学校教育委員会(委員長=前田万葉枢機卿、担当司教=酒井俊弘補佐司教〈共に大阪高松教区〉)は4月28日と29日、「校長・理事長・総長管区長・司教の集い」を都内のホテルで開催した。
 集いのテーマは「美とカトリック教育―希望の扉」。司教4人 と、責任ある立場でカトリック学校に関わる144人(うちオンライン11人)が参加し、美術作品や教皇庁の指針を題材に、現在の学校教育や社会に問われているメッセージの共同識別と分かち合いを行った。

 美術がもたらす希望
キリストの埋葬 (カラバッジョ)

 初日はアンドレア・レンボ補佐司教(東京教区)が、カラバッジョの絵画『キリストの埋葬』の分析を通じて、芸術がもたらす希望について講演した。バチカン美術館所蔵の同作品は、キリストの遺体が十字架から降ろされて墓に運ばれる場面を描いたもの。現在は大阪・関西万博のバチカンパビリオンで展示されている。
 カラバッジョは、宗教改革真っただ中の1602年から04年にかけてこの作品を描いた。レンボ司教は「この時代、カトリック教会は信仰を視覚的に強調し、感情に訴える芸術を求めていた」と説明。カラバッジョがこの作品で死の悲しみを描きながら、構図や色、5人の登場人物や物に「信仰」「復活」「希望」などのメッセージを込めていることを丁寧に解説した。
 レンボ司教は、どの文化でも芸術は神の創造の業と人間の協力によってなされるものであり、その美しさは永遠のものであると強調。「戦争や貧困、憎しみがある世界であっても、カラバッジョの作品は再び希望をもたらす」と話した。
 続けてセルヴィ・エヴァンジェリー会員の 西村桃子さんの指導の下、2021年から昨年にかけて行われた第16回シノドス(世界代表司教会議)通常総会でも用いられた分かち合いの方法「霊における会話」を体験した。レンボ司教が解説した『キリストの埋葬』が、現代にどのようなメッセージを語りかけているかについて、数人ずつのグループに分かれて共同識別を実践した。 

 対話の文化を育む

 2日目は酒井補佐司教が、2013年に日本カトリック司教協議会が定めた「日本カトリック学校としての自己点検評価基準」について解説した。23年に実施された「カトリック学校教育実態調査」の結果から、同評価基準には次のような課題が見えてきたと指摘した。①「これができていないのではないか」と現場でネガティブ(否定的)に受け止められている面がある、②同評価基準7「すべての教育活動が、キリスト教精神に基づいて行われている」は具体的にどういうことかが分かりにくい、③同実態調査の結果だけでは実態は見えても、進むべき「方向性」が見えてこない。
 ③の「方向性」については、カトリック学校はほとんどが修道会によって創立されたため、これまでは「修道者(会)の示す方向」を向いていた。しかし担い手となっていた司祭・修道者は減少しつつあり、今後は「教会(教皇・教皇庁・司教)の示す方向」を意識していくことが必要ではないかと酒井司教は話した。
そのための一つの方法として、教皇庁教育省(現・教育文化省)が22年に出した指針「カトリック学校のアイデンティティ 対話の文化をはぐくむために」を紹介。同指針27~30「対話のための教育」には、対話の文化を育むことの重要性が説かれている。酒井司教は、4月21日に逝去した教皇フランシスコが対話を重んじる教皇だったと話した。
 「カトリック学校教育実態調査」分析チームメンバーの有馬実世さん(東京学芸大学教職大学院准教授)、小林由加さん(学校教育委員会委員、清泉女子大学・聖心女子大学非常勤講師)が導き手となり、「日本カトリック学校としての自己点検評価基準」の項番6と7に自校の取り組みを照らし、振り返る分かち合い も行われた。
 酒井司教は「難しいこともあると思いますが、希望を持って歩んでいただきたい」と参加者らを励まし、前日の「霊における会話では、他者との対話の中に聖霊が働くことを実感できたのではないでしょうか」と集いを締めくくった。
 午後は麴町教会(東京・千代田区)に移動し、参加者たちは髙祖敏明神父(イエズス会)から、教会の歴史と主聖堂の12本の柱やステンドグラス、楕円形の意味などの解説を聞き、教会建築を見学した。講話の後、ミサをもって閉会した 。

参加者による分かち合い
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