武器見本市開催に市民、宗教者が猛抗議

 日本では2022年末に閣議決定された「安保三文書」(三文書で構成される日本の防衛政策)により殺傷能力のある武器の輸出が可能になり、今や日本は世界の軍需産業にとって魅力的な市場となっている。千葉県千葉市の幕張メッセでは通算5回目となる武器見本市が5月21日から23日まで開催され、初日の21日には会場入口で市民有志350人が武器売買で利益を得る「死の商人」たちに強く抗議をした。
 世界450社以上が参加した今回の武器見本市(DSEI Japan=ディーエスイーアイ ジャパン)は、日本の防衛省、経済産業省、外務省、警察庁らが後援し、「日本において唯一の大規模防衛・安全保障総合展示会」と銘打っている。しかし、実際は「人を殺す武器の売買」をする商談の場となっているのだ。
 武器取引反対ネットワーク代表の杉原浩司さんが収集した情報によれば、「武器見本市」展示場の中央に設置されていたのはイスラエルの大手軍需会社エルビット・システムズ製の自爆型ドローン「スカイストライカー」。今年4月、イスラエル軍がパレスチナ・ガザの避難民テントを攻撃し子ども14人を含む30人以上を虐殺した時に使用された武器だ。
 しかも武器の性能をアピールする際に「戦地で実証済み」という言葉が使われている。つまり「大勢の人々を殺すことができた」ということを誇っているわけだ。
 会場入口前で行われた市民による「大抗議行動」には、パレスチナ人の女性たちも参加。「今も子どもたちが殺されているのです」と訴える中で、ガザ出身のハニンさんがこう声を上げた。
 「武器見本市の陰でガザでのジェノサイド(大虐殺)が続いています。武器見本市は大量虐殺を祝う場になっています。今や30万人以上のパレスチナ人が殺されています。病院や学校、住宅に爆弾が落とされています。生きたまま焼かれた人、頭を吹き飛ばされた赤ん坊…。最悪な状況が続いています。ここ千葉は、その虐殺で利益を得ている企業たちを歓迎しています。あなたたちは虐殺の共犯者です」
 今回の武器見本市には、78カ国から450人の政府関係者を含む総勢8000人が参加した。
 前教皇フランシスコは2015年9月24日、米国連邦議会でこう演説している。
 「なぜ個人や社会に対して計り知れない苦痛を与えようと計画している者に殺傷能力のある武器を売るのでしょうか? 残念ながら、その答えはご存じのとおり単にお金のためです。そのお金は血にまみれています。武器の売買をやめさせることは私たちの責務です」
 この演説から10年が経過しているが、前教皇の遺志に逆行し、武器の売買で利益を得る「武器ビジネス」は世界的に拡大するばかりだ。
 市民有志による「大抗議行動」には平和をつくり出す宗教者ネットや、カトリック正義と平和協議会など宗教関係者も参加した。札幌教区正義と平和協議会の佐藤裕子(ゆうこ)さんは、日本で開催されている武器見本市のことがずっと気になっていたので、今回、ガザの虐殺被害者に連帯するために駆け付けたという。
 千葉・西千葉教会の加藤和江さんは、「人々がガザに閉じ込められ避難することができない状況で爆撃することが信じられない。何もできないことが、悔しくて、悔しくて仕方なかった」と、「大抗議行動」に参加した理由を涙を浮かべながら話した。
 また加藤さんの娘の丸尾優祈(ゆき)さんは、これまで武器見本市があることを知らなかったが、「戦争の火種になるものを展示している現実」をもっと学びながら、多くの人に伝えていきたいと語っていた。

幕張メッセ会場入口で「武器見本市」に反対する大抗議行動
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