えん罪救済への法改正求め 大署名運動キックオフ市民集会

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えん罪救済への法改正求め 大署名運動キックオフ市民集会

 再審(やり直し裁判)手続き開始から43年を経て無罪を勝ち取った袴田巖(はかまた・いわお)さんらの闘いなどをきっかけに、再審を巡る法改正への動きが本格化している。無実の人が一刻も早く救われるための法改正実現に向け、署名活動を開始する市民集会が2月20日、東京・千代田区の麴町教会ヨセフホールで行われた。趣旨に賛同する市民約200人が集まり、会場は満員になった。弁護士が現状報告し、えん罪被害者と署名の呼びかけ人らがアピールを行った。

 声を上げ、署名を

 この問題のために10年余り活動を続けてきた弁護士で、日本弁護士連合会(日弁連)の再審法改正推進室長であり、政府の法制審議会(以下、法制審)の刑事法(再審関係)部会委員も務める鴨志田祐美さんが現状を報告した。「今はすごく厳しい局面です」
 昨年から二つの改正刑事訴訟法案が、国会提出に向け準備されてきた。えん罪被害者救済の枠組みを定めた超党派の議員連盟案と、法務省の付属機関である法制審が作成した、これまでのように検察側が有利な案だ。
 1月23日に衆議院が解散したことで、議員連盟案は廃案となってしまう。そればかりか2月2日開かれた18回目の法制審で、法務省が作成した要綱案について多数決が取られ、13人中10人が法務省案に賛成。反対したのは鴨志田さん含む、日弁連の委員3人だけだった。
 多数決では負けてしまったが、鴨志田さんは「ここが大事なんですけど、世間一般はどう考えていたのか」と、各新聞社が再審制度見直しの動きを1面トップで取り上げ、さらには法制審案を批判する見出しが躍っていたことを指摘。社説にも、えん罪救済の視点が足りないばかりか、救済が遠のくと述べられていたことを紹介し、鴨志田さんは声を上げることと署名への協力を会場に力強く呼びかけた。 
 

法改正の現状を説明する鴨志田祐美弁護士
 えん罪被害者の訴え 悲劇を二度と繰り返さないために

 続いて3人のえん罪被害者が登壇した。
 袴田巖さんの姉・ひで子さんは、袴田さんが長年拘束されていた影響で最近は足腰が弱くなり、外出では車椅子を使用していると話した。ひで子さんは「巖だけが助かればいいとは思っておりません」「皆様のお力で、ぜひ再審法改正をよろしくお願いします。議員立法に期待したいと思っております」と述べた。
 1986年の福井女子中学生殺人事件で犯人とされて服役し、昨年8月に無罪が確定した前川彰司さん(福井県・福井教会信徒)は、第1次再審請求が棄却されてから第2次再審請求を起こすまでは「長いトンネルでした」「暗い、真っ暗なトンネルを歩いているような、シルクロードを歩いているような時間だった」と振り返った。
 前川さんは今から30年前、30歳の時に、この日の会場である麴町教会に通っていたことを打ち明けた。その時に、「翼が生えたような、霊的な体験をした」ことが、自身の再審の闘いにとってよりどころの一つになったという。今後の目標としては再審法改正を目指し、活動を続けていくと決意を述べた。
 狭山事件の犯人として汚名を着せられ、その無念を晴らすことがかなわず、昨年3月に亡くなった石川一雄さんの妻・早智子さんは、懸命に再審開始を訴えた。第3次再審請求を起こした石川さんが亡くなったことで、審理が打ち切りとなり、妻である早智子さんが引き継ぎたいと願っても、現在の法律ではそれは不可能だ。早智子さんは昨年4月に、自身が再審請求人となって第4次再審請求の申し立てをしている。
 そして、えん罪を訴えて再審を求めている人々の闘いに多くの時間がかけられていることについて「(検察は不服申し立てができるので)いつまでも長引いて、再審開始決定が出ても法廷も開かせない。そのような検察のやり方は、本当に許せない」と訴えた。早智子さんは「夫、石川一雄の悲劇を二度と繰り返さないためにも、えん罪を訴えている人が一日も早く救済されるためにも、制限を付けない検察の証拠開示の義務化と検察の不服申し立ての禁止、再審請求者の拡大」を求めた。
 続けて会場に駆けつけた金平茂紀(しげのり)さん(ジャーナリスト)、神田香織さん(講談師)、周防(すお)正行さん(映画監督)、村山浩昭さん(弁護士)、松浦悟郎司教(名古屋教区)、金聖雄(きむ・そんうん)さん(映画監督)、福島みずほ国会議員が、えん罪救済のための法改正への原動力となる署名を呼びかけた。
 会の終わりに集会アピールが読み上げられ、参加者らは署名用紙の束を手に解散した。
 集会に参加した小川哲生(てつお)さん(73)は、ハンセン病への偏見と差別から引き起こされた、菊池事件の再審請求を求める活動をしている。「(今日は)再審請求を求める集会なので参加しました。菊池事件も(先月28日)再審請求が棄却されてしまいました」。再審請求の実現のための学習会を開き、署名運動をしていると話した。
 署名についての問い合わせは、「無実の人を救おう!連絡会」(info.mukyuuren@gmail.com)まで。当日の動画は、labornetTVのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=2Sxun5sboaI)で視聴することができる。

えん罪被害者の立場から訴える前川彰司さん(右から2人目)
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