今月6日に報じられた12歳のタイ国籍の少女が東京都内の違法なマッサージ店で性的な接客を強いられていた事件では、国内の深刻な人身売買の実態が明らかになりつつある。
国内における強制労働や性的搾取などの「人身売買」の現状と課題を、宗教や政治、メディアなどのさまざまな視点で分かち合い、人間の尊厳について考える円卓会議が11月19日、東京・千代田区の参議院会館で開かれた。世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会・人身売買禁止タスクフォースが主催し、会場ならびにオンラインで100人が参加した。会場には市民や宗教者だけでなく、国会議員や出入国在留管理庁の職員らの参加もあった。
「小さな主語」で物事を語る
基調発題した札幌地域労組の鈴木一さんは、突然の光熱費の値上げで困窮したベトナム人技能実習生らを支援した事例を説明した。雇用主側とのやり取りの証拠があったこと、当事者が諦めずに助けを求めたこと、憲法第28条で勤労者に保障されている団結権、団体交渉権、団体行動権を行使したことが「勝因」となり、和解にこぎつけることができた。
この日のモデレーター(調整役)も務めたジャーナリスト・キャスターの堀潤さん(8bitNews代表理事)は、メディアの立場から発言。「外国人が」「難民が」などの「大きな主語」ではなく、市民一人一人を丁寧に見つめ、「小さな主語」で物事を語ることが大切ではないかと呼びかけた。「大きな主語は分断を招きます。細かな事実関係を調べなくても、個々人に出会わなくても語ることができてしまいます」と、「大きな主語」で安易に事象を報じることへの懸念を示し、警鐘を鳴らした。
円卓ディスカッションでは、仏教者によるベトナム人留学生や技能実習生の支援、カトリックの奉献生活者の国際ネットワーク「タリタクム」の人身取引撲滅のための取り組み、日本で暮らすムスリムの人々による被災地やホームレス支援の活動などが分かち合われた。
会議の最後に「WCRP日本委員会 人身売買禁止に向けたアピール2025」が、満場一致で採択された。同アピールは、人身売買の撲滅に向け、官民が啓発を進めている一方で、被害者が被害を受けていることを自覚できないよう管理・支配する手段が巧妙になっていることを指摘。「人間を手段として扱い尊厳を踏みにじる人身売買の実態を断じて看過することはできない」との決意の下、各機関と連帯して、啓発活動や犠牲者への支援といった具体的行動をしていくことを宣言している。

