1986年に福井市で女子中学生を殺害したとされた前川彰司さん(60/福井教会信徒)の無罪が8月1日、確定した。これを受け、福井県を管轄する名古屋教区の松浦悟郎司教は即日、「教区の皆さま」に向けて声明を発表し、無罪確定を喜ぶとともに、冤罪(えんざい)を生みやすい「再審制度の問題点」にも言及した。声明は教区内の全小教区と修道院にメールとファクスで送られた。
声明は、前川さんが、一審で無罪とされながら検察側の控訴により95年に有罪判決が下され、その後7年間の懲役刑を受けて服したこと、前川さんが一貫して容疑を否認していたこと、一度は棄却された再審が今年3月に始まって7月18日に無罪を獲得。8月1日に検察が上告を断念して無罪が確定した経緯を述べている。
また前川さんが、有罪判決の2カ月後にカトリックの洗礼を受けていることに言及し、「30年もの間、神様の導きを信じ、希望を捨てず、苦しい日々を乗り越えて無罪を訴え続けられました」と、前川さんの歩みに敬意を表した。
さらに声明は再審制度の問題点にも触れ、日本弁護士連合会が求める「全面的な証拠開示の制度化」と「再審開始決定への検察不服申立て禁止」の必要性を強調。二度と冤罪被害者を出さないために「私たちも関心をもって祈り、取り組んでいきたい」と呼びかけた。
前川さんと松浦司教は、松浦司教が北陸を訪れる機会にたびたび顔を合わせてきた。今回、松浦司教が声明を出すことを前川さんに打診したところ、歓迎されたという。
声明全文は、名古屋教区ウェブサイトで読める。
