ワクワクしながらサンタを待つ 宮城・塩釜カトリック幼稚園

 12月には、全国各地の幼稚園にサンタクロースが現れ、子どもたちにプレゼントを渡す。宮城県の塩釜カトリック幼稚園では今年、これまでと違った形でサンタさんを迎えた。子どもたちは毎日ワクワクしながらサンタさんを待ち、クリスマスに向けて心の準備もしてきた。

 12月の初めごろ、塩釜カトリック幼稚園にサンタクロースから手紙が届いた。

「こころをきれいにしてイエスさまをむかえるじゅんびはできているかい?」

 手紙は、ある教室では天井に、別の部屋では窓際に貼られている。見つけた子どもたちは大さわぎ。しかも手紙には、これから時々みんなに会いに幼稚園に行くと書かれていた。「9:00~9:15に!」と時間の予告まであった。

玩具スペース棚の天井にも貼って
あったサンタさんからの手紙

 予告通り、サンタは朝、現れた。それも玄関からは入って来ない。ある子は庭を走っていくサンタを見つけ、ある子は門の外に頭を出すサンタを見た。みんなで聖劇の練習をしていると、サンタがテラスから見守っていたりもする。サンタは言葉は交わさず、いつも風のように去っていく。

 おまけによく落とし物をしては「ひろっておいて」と手紙がくる。最初は「サ」と書かれた札。別の日は「ク」。次の日は「ス」。子どもたちは頭を寄せ合って考える。「これ、つなげるとサンタクロースになるんじゃない?!」

 帰りの時間が近づくと、先生が子どもたちに尋ねる。
 「今日はイエス様が喜ぶ心になれたかな?」

 子どもたちは手を挙げて、「〇〇ちゃんに折り紙の折り方を教えてあげた!」「劇の練習が楽しくできた!」と報告。「〇〇ちゃんがお友達のジャンパーをたたんであげていた」と友達がした良いことを伝える子もいる。報告できた時は、ツリーにオーナメントを飾った。このツリーには「心のツリー」という名前が付けられた。

 12月15日、とうとうクリスマス会にサンタがやって来て、子どもたちと顔を合わせ、プレゼントを配ってくれた。子どもたちももらうだけではない。今回は、子どもたちからも折り紙で作ったリースや手紙をサンタさんに贈った。

サンタクロース登場。町の英会話の先生がサンタ役に

 一連の企画を発案したのは、仙台市の聖和短期大学学長の三浦光哉(こうや)さん。三浦さんの専門は、子どもたちの発達障害や不登校に関する問題で、今年も短大で公開講座を開いてきた。
 塩釜カトリック幼稚園の教諭たちは、近年、「発達に特性のある」子どもたちが増えていると感じて、三浦さんの講座に足を運んでいた。
 三浦さんによれば、講座には通常一つの園から1人の教諭が参加するが、塩釜カトリック幼稚園からは、園長の佐藤香さんはじめ5人が参加していた。
 「頑張ってる先生たちだなぁと思いました」と三浦さんは話す。

 そんな塩釜カトリック幼稚園にも少子化の波は押し寄せ、来春の入園希望者は極端に少なくなることが分かった。相談を受けた三浦さんは、熱心な同園の先生たちに協力したいと、今回の企画を具体的に提案した。
 サンタの来園時間を朝9時からと予告したのは、「遅刻する子、行きしぶる子をなくすためです」と三浦さん。
 ワクワクするような仕掛けを作ったのは、「子どもたちが家で話したくなるからです。そうすると家族と話す機会が増えるでしょう。家族は、そんなふうに子どもに関わってくれる先生たちの熱意を感じるはずです」
 三浦さんは、熱心な先生たちの教育が親に伝われば、その評判が交流サイト(SNS)に載って地域に広がると考えている。

 日々チラっと登場するサンタの役は、元小学校教諭でカトリック信者の丸中新一さん(塩釜教会)が務めた。
 「少なくとも2週間ぐらい、子どもたちはサンタとクリスマスを待って、いろんなことを考えたり、家で話したりしたと思います。そうだったらいいなと思います」

 クリスマスを待つ間、子どもたちは先生から、世界中に戦争や病気で苦しんでいる人たちがいることも教えてもらった。その人たちのために、何があったらいいか話し合った。「お薬をあげたい」「お家」「ごはん」「お布団」と声を上げた。でも遠い国に「お家」や「ごはん」を送るのは難しい。お金なら送れることを知った子どもたちは献金箱を持ち帰り、自分のおやつをちょっと我慢して献金した。家でお手伝いを頑張り、その頑張りを見て、献金に協力した家族もある。
 「心のツリー」と献金箱は、2学期終業式の礼拝会で、イエス様の前にささげた。

イエス様に献金箱をささげた子どもたち

 今回、教諭たちの熱意に、園外の大人たちが力を合わせた待降節になった。クリスマス会は終わったが、佐藤園長は「これからも子どもたちと一緒に、イエス様のお喜びになる心で過ごせるようにしていきます」と話す。
 この大人たちに見守られながら、塩釜の子どもたちが日々、育っていく。

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