2年に1度の「国際カトリックスカウト協議会(ICCS/本部・ローマ)アジア太平洋地域カンファレンス」が11月1日から4日まで、東京都内の初台教会や国立オリンピック記念青少年総合センターを会場に開催された。
「カトリックスカウト」とは、ボーイスカウトなど、世界中で活動しているスカウト組織の中でも、カトリックの信仰教育を目的としている組織のこと。
ICCSには現在、世界60有余に及ぶ国・地域の組織が加盟している。このカンファレンスは、ICCSに加盟するアジア太平洋地域6カ国のスカウト組織から代表指導者が集い、スカウト教育について学び合う研修の場だ。
今回の開催テーマは「Hoping against hope」(ホーピング アゲインスト ホープ/希望するすべもないときにも、信じて希望をもつ〈仮訳〉)。
日本カトリックスカウト協議会(JCCS/会長=関利定)がホストとなり、九つの国・地域(韓国、マカオ、香港、台湾、東ティモール、ベトナム、タイ、フィリピン、日本)から約80人を迎えた。
日本のカトリックスカウト担当司教、アンドレア・レンボ東京教区補佐司教による基調講演や分かち合いが行われた。参加者は各国・地域のスカウトの活動状況についても学び合い、交流した。
沈黙し、待ち望む時
初日は初台教会で、レンボ司教主司式によるミサと開会式が行われた。
代々木オリンピックセンターでは、レンボ司教が「聖土曜日における聖母マリア」をテーマに基調講演を行った。
聖土曜日とは、十字架と復活の間で「沈黙し、待ち望む時」だとレンボ司教は説明し、絶望的な状況の中、人間の確信からではなく、信仰によって真の希望を抱いた聖母マリアに焦点を当てた。

「現代の私たち」は、イエスが亡くなった後の弟子たちのように、希望を失い、聖土曜日のような時を生きている。だが、「それでも聖霊は、歴史の内に静かに働き続けている」。聖母マリアは、愛し、希望し、沈黙のうちに待つ教会の姿を体現しているとも述べ、人類は「キリストの勝利の光」、つまり聖体を拝領し、主日を祝うことによって闇の中を歩む存在だと語った。
レンボ司教は最後に、「私たちの信仰を支えるものは何か?」などと問いかけた上で、聖土曜日とは空虚な時ではなく、新しい命の誕生を待つ妊娠期間に相当するものだと説明。聖母マリアと共に、信じること、希望すること、そして愛することを学び続けるよう参加者を導いた。
基調講演を受け、参加者は希望を見いだした経験を発表した。参加者の一人は、ある日突然、スカウト活動に目が不自由な人を受け入れることになり、当初はどのように活動に加わってもらうか方法が分からず困惑したという。しかし、関わり合う中で得た新たな視点によって違いを超え、共に活動することができたと喜びを分かち合った。

分かち合いをするベトナムからの参加者(写真右)
若者たちと共に
ICCSアジア太平洋地域会長のフランシスカ・ボンさんは、ICCSがスカウト活動を通じて社会変革を推進するために立ち上げたプロジェクトに言及。国・地域ごとに司祭1人、青年リーダー1人、そしてチャプレンまたは精神的指導者1人からなるチームを指名してこのプロジェクトを進めていくと説明した。同地域の青少年育成プログラムについても紹介した。
今回の研修には、初めてICCSの会長が参加した。同会長のアントゥワン・ムゥサリーさんは、ICCSの体制を強化し、若者や女性の参加を促進していく方向性などについて解説した。
また若者も参加した今回は、初めて若者同士が話し合う場が設けられた。若者たちは国・地域ごとのユース(若者)スカウトの活動状況や、活動を続けていくための方法について意見交換した。
会期中、参加者は、アジア太平洋地域のチャプレンを務めるイエズス会のジョバンニ・パク神父が企画したゲームを通して、「実践し、その体験を振り返ること」の大切さを体験的に学んだ。

参加者はグループごとに東京カテドラルなど都内の教会を巡り、共に歩きながら親睦を深めるひとときも持った。
研修は、日本のカトリックスカウト担当司祭・稲川圭三神父(東京教区)主司式によるミサで締めくくられた。
ICCSアジア太平洋地域の前会長・飯盛安信さん(東京・麻布教会)は4日間を振り返り、こう話した。
「印象深いのは、フランシスカさん(ICCSアジア太平洋地域会長)が閉会式で、『私たちは、祝福されています!』と元気にあいさつしたことです。これは、初日に参加されたアンドレア司教様からの『自分は(神様に)祝福されている、と思う人は手を挙げて!』という呼びかけに応えたものだと思いますが、若者から役員まで、皆がフランシスカさんの言葉に大きな拍手を送ったのです。アジア太平洋地域のカトリックスカウトの今後、さらにユースの今後が楽しみです」

に集った参加者たち(11月3日)©高﨑尚彦
