山口教会(山口市)で4月29日、カトリック教会を会場に地元地域を巻き込んで行われるイベント「サビエルフェスタ」(以下・サビフェス)が開かれた。広島教区青年活動企画室(以下・企画室)の協力の下、同教区の青年グループ「ヒロシマユースデー(HYD)実行委員会」が主催し、企画・準備をした。当日は聖堂前に中国地方で人気のコーヒーやパン、雑貨などの物販と、アーティストらによる油絵体験やスノードーム作りなどのワークショップのブースが合わせて21店舗出店した。会場には午前11時のオープン前から長い列ができ、1100人余りが来場。高齢者から子どもまで、地元住民のみならず県外からの来場者もあった。今年4月に同教会に赴任した主任の片柳弘史(ひろし)神父(イエズス会)の講話も2回行われ、テゼの祈りをもって閉会した。


「これってフェスじゃん」―行ってみようと思える教会に
サビフェスが開かれたのは、昨年の11月に続き今回が2回目。企画室の担当司祭で、青年たちと共にこの日の準備を進めた大西勇史(ゆうじ)神父(42/同教区)によれば、サビフェス開催のきっかけは2023年のワールドユースデー(以下・WYD)リスボン大会だった。大西神父と共にWYDに参加した広島教区の青年たちは、そこで同じ思いを共有した180万人ものカトリック青年の「人数の多さ」に勇気付けられ、感動して帰国。大西神父は「教区の行事では、たとえ1000人でも集まる機会はなかなかありません」と話す。
WYD経験者を中心に、日本の教会で「WYDのような喜びを分かち合う場を開くことができないか」と話し合いを重ねた。企画のポイントはとにかく「人数の多さ」だったという。突破口になったのは、ある青年の「これってフェス(=フェスティバル/祭り)じゃん」という一言だ。
企画室職員の益田なおさん(28)は「(カトリック信者が少ない)日本では今でも、教会の敷居を高く感じる方が多いのではないでしょうか。地域の人が誰でも、教会に『行ってみよう』と思えるきっかけづくりとして、祈り(テゼ)の他に食・ワークショップ・語りなどの一見『教会らしくない』活動を入り口に、キリストの福音を親しみやすい形で届けようと考えました」とその時の話し合いを振り返る。
会場は大きな広場があり、地域では「サビエル記念聖堂」の名で親しまれ、観光地としての存在感もある山口教会が候補に挙がった。当時の主任、セゴビア・アルフレド神父(イエズス会)に相談したところ、快諾を得ることができた。
昨年11月4日の第1回は、大西神父の知人らを中心に声をかけ14のブースが出店、600人余りが来場した。「次は1000人を目標に」企画した今回、大西神父が一番うれしかったことは「このイベントを大学の友達に紹介したスタッフ(青年)がいましたが、既にその子(友達)はSNSの発信でその情報を知っていて『行きたいと思っていたの』と言ってくれた」と聞いたことだったと話した。
参加者の声
この日、同教会の保護の聖人であるフランシスコ・サビエルが日本から送った手紙などをテキストに講演した片柳神父は、教会にたくさんの人が集まる光景に衝撃を受けた。「小さな子どもが走り回るのを見るのも久しぶり。このようなことができたのは奇跡です」
北海道から来場したのは下地美也子さん(49)。カトリックの洗礼は受けていないが、大西神父との出会いがきっかけでサビフェスを訪れた。つい最近13歳のめいに病気が見つかったのだと言う。片柳神父の「弱いからこそ強くなれる」という言葉に励まされ、テゼで祈るうちに、自分は「(めいのために)何もできない。祈ることしかできない」と感じていたが、「それで(祈ることしかできないことは)間違っていなかったんだ」と思ったと話していた。
カメラマンとして当日の記録を担当した、青年スタッフの竹添民(たけぞえ・たみ)さん(25/防府〈ほうふ〉教会)は、前回に続き2度目の参加。「前回よりも出店者もお客さんも増えて、楽しんでいる皆さんの喜びの総量も増えたように感じました」
松下絢音(あやね)さん(20)は、カトリックの洗礼を受けていないが、大西神父が浜田教会(島根県)で開いたバーベキューに参加したことをきっかけに、教会に遊びに行くようになった。「今日はめっちゃ楽しかったです。(スタッフとして参加したことは)貴重な経験になりました。次回も参加したいです」
市内で園芸店plain(プレーン)を営む岩光大祐(44)さんは、植物の販売と植え替えのワークショップのブースを出店した。山口教会信徒であり、教会に隣接する山口天使幼稚園の卒園生でもある。中学生まで朝ミサの侍者をした思い出を振り返りながら「こういう形で(教会に)戻って来られてうれしいです」と話していた。
