「宝物を分かち合う」 もうすぐ99歳 カンガス神父に聞く

 山口教会(山口市)助任のルイス・カンガス神父(イエズス会)は、今年6月に99歳を迎える。聞くことや歩くことに不自由さを感じることもあるが、今でも自分のペースでミサの司式や信仰講座に取り組む日々を送っている。「イエス様は友達」だと言うカンガス神父に、宣教の歩みやイエス・キリストへの思いを聞いた。

 イエス様は友達、マリア様は〝恋人〟

 カンガス神父は、スペイン北部の町・カストロで、熱心なカトリック信者の両親の下に生まれた。小さい頃から「自分は単純だから、『永遠の命』という教えを素直に受け入れていました」。
 15歳でイエズス会に入会。宣教師として派遣先が決まるのを待っていた時、太平洋戦争末期に広島で同会修練長を務め、被爆者に献身的に尽くしたペドロ・アルペ神父(同会)からの誘いがあり、25歳で来日した。1958年に東京の麴町教会で司祭に叙階され、同教会や広島の祇園教会で長く司牧した後、2007年からは山口教会で司牧している。1978年にはNHKの大河ドラマ『黄金の日日』に、イエズス会の宣教師ルイス・フロイス役として出演したこともある。
 カンガス神父は、体の衰えは「しょうがない」ことだと話す。「不便なことがあっても気にしない。それで困る人がいても仕方がありません」「(頭の中は)からっぽがいい。心配しない」と自身の「老い」をおおらかに受け止めている。
 今年3月まで山口教会主任を務め、カンガス神父と共同生活をしていたアルフレド・セゴビア神父(イエズス会/現・宇部教会主任)はこう話す。
 「カンガス神父様は『イエス様は友達、マリア様は〝恋人〟』とおっしゃっています。もしけがや病気をしてもここにいたいそうです。『ここ(山口教会)にいれば、(信者たちに)イエス様の話ができる』からって」
 カンガス神父は、同教会主任の片柳弘史(ひろし)神父、助任のドメニコ・ヴィタリ神父(共にイエズス会)と、現在もミサを司式している。「神様にミサをささげることは最高の喜びです」
 この他にも、毎週水曜日は洗礼希望者のためにオンラインで入門講座を開いたり、教会報に文章を書いたりと忙しい毎日だ。「できるだけ皆さんが教会と歩めるように教会報を作っています」

 日本人の心は半分「クリスチャン」

 カンガス神父は日本での長い宣教人生を振り返り、「日本人の心とキリスト教の心は共通点が多い」と話した。「例えば、日本人は家庭や子ども、人を大切にします。それはイエス様が教えてくださったことです」
 またカンガス神父は、カンボジアやアフリカの子どもの教育や生活改善などを援助する活動にも尽力してきた。その活動への支援を呼びかけた際、「日本の人々は寛大に協力をしてくれました。カトリック信者でない日本人でも、心は半分『クリスチャン』だと感じました」。
 そして日本の信者たちに伝えたいメッセージは、との問いにはこう答えた。 
 「大切なのは分かち合うことです。『寛大さ』など、自分の持っている宝物(=たまもの)を分かち合うことで(良いものが)深まり、広がっていきます」

ルイス・カンガス神父。インタビュー中、笑顔を絶やすことがなかった(イエズス会山口修道院の前で)
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