短歌・俳句 9月

◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ

愛し方分からぬままに模索して放蕩息子のたとえに行き着く    横須賀 和泉  舞

【評】子育ての場面でしょうか。正解はなく思い悩むことしばしばですが、聖書のたとえ話に気付かされ光が見えることがあります。「行き着く」に模索の時の長さ、深さがうかがえます。

ハゼ蘭のレンズ越しなる細き茎神の図形を夕暮れに知る     長崎 はっとりのりこ
感情も奪はれていく酷暑なり今年のセミの恋歌しづか        青梅 重吉 知美
一斉に後ろ向きなる向日葵の暑中見舞は戦争反対          福岡 三谷 淑美
子の誕生記念の杏実りたり六十余年の時を経てなお         秋田 進藤八重子
途上国援助に尽くしし曽野綾子拍手で見送る御許への旅       東京 千葉 明子
尻取りに「司祭」「イエス様」「マリア様」声の弾みは正に神の子   秋田 畑山真理子
名を呼べば長き尻尾で返事する神の造作無駄無きを知る       横浜 永井 栄司
ますますに食事療法厳しかり脂質に加えカリウムも夫は       静岡 櫻井 眞子
丘陵にただ一軒のカフェあれど行く手を塞ぐ爆風の音        東京 向井美和子

                (作品の応募方法は短歌応募フォームをご覧ください)

◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎

◎ミサ終へて麦茶にほどけゆく会話  神戸 内田 泰代
【評】ミサ後のだんらんの麦茶が暑さと緊張を解く姿
◎亡き母の部屋を覗きに来る守宮   東京 脇谷 善之
【評】守宮を母の友のように愛情深く詠んでいる
万博の子供の未来虹の橋      岸和田 嶋津 秋子
風鈴やミサの鐘の音重なりて     甲府 穴水 公一
滝風やベール波打つ野外ミサ     仙台 木下  明
ミサ捧ぐ大暑の司祭浦上忌      東京 山口 岳人
夏空に祈りあふれる折り鶴や    名古屋 成田 友子
星涼し祈りの数の瞬きに       神戸 涌羅 由美
喜雨の中草も虫等も天仰ぐ      川崎 守田 光代
新緑の森を見守る聖母かな      京都 今村 聖子
頭数親は入れずに切る西瓜      秋田 畑山真理子
ぬぐふ汗吾妻小富士の小さく見え   仙台 三宅 温子
炎帝は日本列島薙ぎ倒し      各務原 安江 郁子
水音と共に下れり青田道       福岡 木本 敬子
方舟はすでに遠くへ銀河濃し    大牟田 岩永美智子
シスターも児らもはしやいでキャンプ張り 神戸 屋代 弘忠
忌日への祈りとも聞く秋の声          選者吟

  (作品の応募方法は俳句応募フォームをご覧ください)

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