◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ
獰猛な太陽が闇に帰る頃ちりんちりりん風鈴わらふ 青梅 重吉 知美
【評】厳しい暑さが続いている。朝からじりじりと照り付ける太陽を「獰猛な」と手に負えぬ動物のように表現。日没の後、ふと鳴り出す風鈴の音のオノマトペから涼しい風が感じられる。「わらふ」には安堵もにじむ。
主イエスの母なるマリアも幼き日母なるアンナの胸に抱かる 福岡 三谷 淑美
人間学の授業で論じし『海と毒薬』心もやもやのまま終へたり 長崎 荒井 慎一
夕顔はしずしず土を持ち上げていつかは咲ける時を待ちいる 名古屋 富井 弘光
絵ガラスに初夏の陽映す聖堂に遺影の友はやさしく笑ふ 秋田 進藤八重子
梅雨明けを知らせてくれる立葵上まで咲けば麦藁帽子 東京 藤木倭文枝
民の辺に埋葬せよと望まれて前教皇もまた「道である」 川崎 印出美由紀
今はもう達者なところは口だけと自認しつつもラジオ体操 東京 千葉 明子
旅先に教会を訪ねる楽しみはマリア像に捧げる祈り 豊橋 赤沢 進
「ひまわりの水やりボクは心配」とどこへも行かざる夏の少年 秋田 畑山真理子
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◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎
◎梅雨最中花に水やる日は続き 川崎 吉田千津子
【評】空梅雨の様子を実感として捉えている
◎鈍き空はね返すかにチューリップ 吹田 野村 愛子
【評】曇天の中のチューリップが美しく描けた
夏の月八十路を生きる祈りつつ 豊橋 赤沢 進
雨蛙小さき黒目何を見る 春日井 遠藤 晶子
父の日や手酌の卓に旅行券 蓮田 向田 良子
子は大事親も大事や桜桃忌 秋田 進藤八重子
群生の楝の花や廃線路 芦屋 平田ひろみ
花びらの渦の流るる春疾風 豊中 成瀬きよみ
ふるさとになりて秦野の蕎麦の花 秦野 小泉早由美
目に留まる一瞬ごきぶり金縛り 府中 荒井 美邦
主日ミサアンネの薔薇とベビーカー 日野 広山 弘子
遠山に心整ふ夏の空 佐世保 川口 栄子
籐椅子に幽けき祖父のすがた見ゆ 福岡 三谷 淑美
父つくる紫煙の輪つか濃紫陽花 東京 草間をり絵
六月の初聖体の子輝かし 調布 田邉 久義
旅先で与る弥撒や露涼し 選者吟
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