◆ 短歌 ◆ 選者 春日いづみ
野に小さき紫の花を目に留めし人のありてぞ菫生まれぬ 小平 鈴木真木子
【評】野に咲くかれんな菫の花、見過ごしてしまいそうだが、立ち止まり目を留めることで初めて菫の存在が認識される。漠然と物を見るのではなく、姿や色を心に深く留めることが大切。見ることの本質がここにある。
煙草吸うかと見え男の子の昼休みしゃぼんの玉を吹き始めたり 横浜 石川むつみ
私から私たちへと発想の転換をして社会を変えたし 豊橋 赤澤 進
子育てをリスクと宣ふわが娘命賭けたる母を忘るな 町田 樋口 裕子
昭和二十三年家族揃いて受洗せしわが土屋家に司祭生れたり 東京 山下 越子
ご帰天の前日世界の人々に手を振る教皇を決して忘れじ 秋田 畑山真理子
聖母月チューブと装具に守られて外出許可受くマリアに涙 宮津 杉本 友子
掛け布団の内側に数多の十字架見ゆ復活の主に包まれ眠る 横浜 吉村 一
曾野さんの歯に衣着せぬ痛快なコラムの読めぬを寂しく思う 那須塩原 林 秀雄
昼の間の話し相手の猫と共無口な娘の帰宅待ち侘ぶ 横浜 永井 栄司
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◆ 俳句 ◆ 選者 稲畑廣太郎
◎聖五月バチカン広場沸き立ちぬ 川崎 吉田千津子
【評】新教皇レオ十四世への心からの存問
◎夫の名を呼べど朧に消えゆけり 神戸 内田 泰代
【評】御夫君を亡くされた悲しみを季題に託して
ひつそりと咲き満ちにけり花菖蒲 仙台 三宅 温子
父の日の空へつなげる糸電話 東京 草間をり絵
鯉幟千びき共に風を受け 草加 長谷部禎子
風の道水の道行く夏つばめ 神戸 涌羅 由美
蘇る若葉産声いきいきと 川崎 守田 光代
教会の裏十薬の白き園 大阪 酒井 湧水
夏めくやテーブルクロス買ひ替へて
丹波篠山 高岡すみ子
鯉のぼり戦なき空あをあをと 松山 丹下はつみ
薫風に天を見上げて主の祈り 豊橋 赤澤 進
疎開の荷牽く牛宥む鉄線花 神戸 屋代 弘忠
大の字の鼾で目覚む昼寝かな 府中 荒井 美邦
ローマより吹きわたる風新樹晴 神戸 平尾 孝子
地球号壊さないでとみどりの日 各務原 安江 郁子
夏空に揚がる白煙立つ教皇 秋田 畑山真理子
水の黙蛍解いてゆきにけり 選者吟
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