司教と社会問題を学ぶ 名古屋教区青年グループ「ブリッジ」

 名古屋教区の青年グループ「ブリッジ」は、一月に1度、松浦悟郎司教(同教区)と社会問題を学んでいる。グループ名には、一人一人が「世界の架け橋になるように」との思いが込められている。
 3月16日、メンバー5人が名古屋教区本部事務局に集まった。2月から取り組んでいるテーマは、環境問題を「福音の視点」で見ること。日本カトリック司教団が環境問題への理解と実践を提言した書籍『見よ、それはきわめてよかった–総合的な(インテグラル)エコロジーへの招き』をテキストに取り組んでいる。
 なかなか難しい内容だが、メンバーたちは互いに思いを分かち合いながら、果敢に挑戦している。

 和解を実現するための学び

 ブリッジの始まりは7年前。大橋左季(さき)さん(恵方町教会)と簗良我(やな・りょうが)さん(春日井教会)は、松浦司教の勧めで、日中戦争(1937~45年)中の南京大虐殺や、捕虜に生体実験を行ったことで知られる関東731部隊をテーマにした朗読劇を見に行った。二人ともその内容の残酷さに心が痛み、ショックのあまり劇が終わってもその場から動くことができなかったという。
 その様子を見た松浦司教は二人にこう声をかけた。「(劇で知ったことを)そんなに重く捉えたのなら、日本が諸外国にしてきたこと(加害の歴史)をもう少し勉強してみたら」
 大橋さんは「若い世代でもきちんと知って、未来に伝えていかなければいけないと思いましたし、自分たちもどういう生き方をしていきたいのかを学びたいと思って」松浦司教と相談。社会問題に関心のある青年たちが集まって、勉強会が始まった。
 これまで勉強したテーマは、日本が朝鮮半島を植民地支配した歴史、イスラエルとパレスチナの問題やロシアのウクライナ侵攻など。コロナ禍の期間もオンラインで学習会を続けた。
 松浦司教は、学びのテーマや活動内容は青年たちの希望を尊重していると話す。戦争や、日本がアジア諸国を植民地支配した歴史を学ぶことは、心の負担になることもあるが、松浦司教は「私たちには和解を実現するための責任があります」「悲惨な歴史の中でも、(加害に加わらずに)あらがった人もいます。そのような人の生き方も知ってほしい」と考えている。

 青年たちの声

 西村麻莉子さん(南山教会)は日本の植民地支配を学んだ後、罪悪感を抱えながらも、松浦司教とブリッジの仲間たちと2019年に韓国を訪問。現地のカトリックの青年らとの交流で友情が芽生え、SNSなどで今も関係が続いている。
 大橋さんは、日本の植民地支配下で行われた内容が「あまりに残酷だったので、毎回苦しくて」出席できない時期もあったと言う。「司教様にそのことを責められることはありませんでした。少しブランクを置いて落ち着いて考えたら、結局私たちは『地球家族』なんだと思えるようになりました」
 関東の大学に通う酒井優太さん(岡崎教会)は、オンラインで参加を続けた。「コロナ禍で人と対面でつながることができないなら、せめてオンラインでつながりたいと思いました」と話す。坂井さんにとってブリッジは、キリスト教的な生き方を確認できる場になっている。
 今月、受洗予定の熊谷(くまがい)有美子さん(安城教会)は、今年2月の堅信式で松浦司教に出会い、その説教に引かれた。松浦司教にブリッジに来てみないかと誘われ、「私はまだ洗礼を受けてないのですがいいですか」と尋ねると、松浦司教から「そういう人ほど来てほしい」と言われたという。「ブリッジは自分では気付かなかったことをいつも感じさせてくれる場です」と熊谷さんは話した。

松浦悟郎司教(前列右から二人目)とブリッジのメンバー
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